1枚で数万円も!?中国で流通していた外国人専用紙幣「外貨兌換券」とは?
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今でこそ中国はキャッシュレス大国と言われていますが、普及したのは2010年代に入ってからです。それまでは日本と同じように、紙幣や硬貨が決済の主要な手段として用いられてきました。中国の通貨は人民元(RMB)ですが、外国人だけが使える「外貨兌換券」という紙幣が流通していたことはあまり知られていません。この記事では、外貨兌換券の仕組みと使われていた背景について説明します。
わずか13年だけ流通していた外貨兌換券
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外貨兌換券(外匯兌換券)は1980年4月1日から1993年12月31日まで中国で流通していた特別な貨幣です。人民元と同等の価値を証明しますが人民元ではありません。
鄧小平による改革開放政策に伴い、中国では1978年から段階的に市場経済が導入されました。日本を含む多くの外国企業が中国に投資を始め、中国を訪れる外国人や華僑が増えたことにより、中国に流入する外貨が急激に増えました。
外貨の流出入を適切に管理し違法な両替を防ぐために、中国政府は1980年に外貨兌換券の発行を決定しました。外国人は中国国内に持ち込んだ外貨を人民元ではなく、外貨兌換券に両替して使っていたのです。
外貨兌換券は一般的な商店でも使用できましたが、お釣りは人民元で返ってきたようです。
一部のお土産店やホテル、友誼商店(国営の商店)では外貨兌換券しか使えない場所もありました。外貨兌換券と人民元は等価とされていましたが、外国人しか購入できない高級品ほしさのために、割高なレートで外貨兌換券と人民元の両替を迫る中国人もいたようです。
また、当時外国領だった香港とマカオに隣接する広東省の珠海や深圳では、商店の値札には人民元と香港ドル、外貨兌換券の3種類の金額が書かれていたのだとか。
1990年代の中国経済の発展に伴い、1994年1月1日をもって、外貨兌換券の流通は停止されました。
骨董品としての価値あり?オークションに出せば高価で落札も
外貨兌換券の存在を知ったのは、筆者が深圳に滞在していた頃、とある飲みの席の後に帰りのタクシーで同乗した駐在員の方と話しているときでした。
1990年代から何度も中国に駐在する中で、中国の経済やインフラが目まぐるしく変わっていく様子を伺ったのですが、人民元でも香港ドルでもなく外国人しか使えない紙幣があったという話を最近思い出したのです。
もし仮に外貨兌換券を持っていても、貨幣としての価値はありません。しかし、世界には紙幣や硬貨のコレクターがいるようです。Googleで「外貨兌換券」を検索すると、オークションのサイトが上位に表示されました。特に、折りたたまれていない状態の外貨兌換券は価値が高いようです。1枚でも数万円の値段がついている外貨兌換券も目にしました。
現在の中国では現金を使うことがほとんどなくなり、多くの人が日常的にスマートフォンで決済しています。わずか30年前まで外国人専用の紙幣が流通していたことを考えると、中国社会がいかに短期間で変化してきたのかがわかりますね。
[参考]
Foreign Exchange Certificates Issued under Improved Forex Administration (1979 – 1989)