今年の漢字から考える2025年の経済【やさしいニュースワード解説】
在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「今年の漢字から考える2025年の経済」です。
2024年の「今年の漢字」は「金」
今年ももうすぐ終わり。年末の風物詩として日本漢字能力検定協会が京都市の清水寺で毎年発表している2024年の漢字は、「金」でした。同協会の資料によると「金」が選ばれるのは2000年、2012年、2016年、2021年に次いで5回目です。
夏にパリで開催されたオリンピック・パラリンピックで日本選手団が多くの金メダルに輝いたことや、新潟県の「佐渡島(さど)の金山」が日本で26件目の世界遺産に登録されたこと、手にするお金がらみでは20年ぶりの新紙幣の流通が話題になったことを受けたものでした。
一方で、自民党派閥の政治資金をめぐる問題で国内政治が混迷し、秋の衆院選で与党が過半数割れという結果になったことや、全国で闇バイトによる金目当ての強盗事件が頻発し、社会問題になった影の部分で注目されたことも、選ばれた理由のひとつになりました。ちなみに2位は「災」、3位は「翔」でした。
企業が選ぶ今年の漢字は「変」
企業が選ぶ漢字アンケートもあります。信用調査会社の帝国データバンクが企業1,320社に今年の事業活動を示す漢字についてアンケートしたところ、1位は「変」でした。
選んだ理由について企業からは「アメリカ大統領や日本の首相が変わり、世の中の仕組みも変化が激しい」といった声や、「変わらなければ埋没してしまう」という声が上がりました。国内外のさまざまな変化に直面しつつ、自身も前向きな変化を求められた企業の実感が反映しているといえるでしょう。ちなみに帝国データバンクのアンケートの2位は「耐」、3位は「忍」でした。
この結果から、厳しい環境変化に企業が耐え忍んでいる様子がうかがえると同時に、年末時点で示された、こうした意識は2025年にも引き継がれると見ることもできるでしょう。
2025年、世界や日本の経済はどうなる?
来年の世界経済を展望すると、トランプ次期大統領が打ち出す経済政策の行方や、中国の景気減速などが懸念材料となります。すでに表明している中国やカナダ、メキシコ製品への高関税政策は日本にも影響し、株価や為替相場など金融市場への波及も予想されます。加えて、ウクライナや中東、台湾情勢などの地政学的リスクも焦点です。
日本経済は、来年の春闘で高い水準での賃上げが実現すれば、国内景気の回復期待につながりますが、日本銀行が追加利上げにいつごろ踏み切るのかも注目されます。
2024年の漢字で示された「金」や「変」は、2025年にはどんな意味を持ってくるのでしょうか。前向きな動きにつがっていくのか、それとも先行き不透明感が強まるのか。願わくは良い方向へと進んでもらいたいところです。