副業の経費はどこまで認められる?税理士に聞く節税対策
副業の収入が増えてくると、経費管理が重要になってきます。しかし、何を経費として計上できるのか、多くの人が不安を感じているのではないでしょうか。本記事では、税理士の渡邊亮氏に、副業における経費の重要性、認められる経費と認められない経費の違い、自宅を仕事場とする場合の経費計上方法、帳簿と領収書の管理方法、青色申告のメリットまで、副業の経費管理と税負担軽減について詳しく解説していただきました。適切な経費管理と節税対策を行うことで、副業をより効率的かつ合法的に運営する方法を学びましょう。
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副業をするのに必要な費用が経費
――副業における経費の重要性について教えていただけますか。
渡邊:副業における経費の管理は非常に重要です。適切に経費を計上することで、課税対象となる所得を減らし、結果的に税負担を軽減することができます。ただし、経費として認められるものとそうでないものがありますので、注意が必要です。
――経費として認められる項目にはどのようなものがありますか。
渡邊:基本的に、副業を行うために直接必要な費用が経費として認められます。例えば、仕事に使用する機材や道具の購入費、ソフトウェアのライセンス料、交通費、通信費などが挙げられます。
また、自宅の一部を仕事場として使用している場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上できる可能性もあります。
重要なのは、これらの費用が副業に直接関係していることを説明できるかどうかです。「これは売上を上げるためにこういう理由で必要な支出でした」と説明できることが大切です。
――逆に、経費として認められない項目にはどのようなものがありますか。
渡邊:私的な支出や、副業と直接関係のない費用は経費として認められません。例えば、日常生活に必要な衣服や食費、趣味や娯楽に関する支出などです。また、交際費については、認められるケースと認められないケースがあります。
【認められるケース】
・事業の遂行に直接関連していること
・支出が合理的かつ適正な範囲内であること
【認められないケース】
・個人的な交際費
・過剰に贅沢な支出
・自宅や家族に関わる支出
注意が必要なのは、ビジネスに関連するように見えても、実際には私的な要素が強い支出です。例えば、高級なレストランでの打ち合わせ費用や、必要以上に高価な機材の購入などは、税務署から疑問を持たれる可能性があります。
――自宅の一部を仕事場として使用している場合の経費計上について、詳しく教えていただけますか。
渡邊:自宅の一部を仕事場として使用している場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上できます。ただし、全額を経費にすることはできません。一般的には、自宅の総面積に対する仕事場の面積の割合で按分します。
例えば、3LDKの家で1部屋を仕事場として使用している場合、全体の面積の5分の1程度を仕事用として計上できるでしょう。この場合、家賃や光熱費の5分の1を経費として計上できます。
ただし、その部屋を完全に仕事専用として使用していることが前提です。寝室や子供部屋など、私的利用と混在している場合は、さらに按分する必要があります。重要なのは、経費計上の根拠を明確に説明できることです。
税務署から質問があった場合に、「なぜこの金額を経費として計上したのか」を合理的に説明できるようにしておく必要があります。
会計アプリで帳簿と領収書を管理
――帳簿と領収書の保管方法について、アドバイスをいただけますか。
渡邊:帳簿と領収書の適切な保管は、確定申告を円滑に行う上で非常に重要です。基本的に、収入と支出の両方について、日付、金額、取引相手、内容を記録した帳簿を作成し、それに対応する領収書や請求書を保管する必要があります。
最近では、スマートフォンの会計アプリを使用して、レシートを撮影し、データとして保存する方法が人気です。これらのアプリは、撮影したレシートの内容を自動で読み取り、帳簿に反映してくれる機能があるものも多いです。
紙の領収書を保管する場合は、日付順やカテゴリー別に整理してファイリングするといいでしょう。ただし、紙の保管は場所を取るため、最近では電子保存が主流になっています。
――電子帳簿保存法について、簡単に説明していただけますか。
渡邊:電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子的に保存することを認める法律です。この法律に基づいて正しく電子保存を行えば、紙の原本を処分することができます。電子保存を行う際は、データの改ざんや消失を防ぐための措置を講じる必要があります。
具体的には、タイムスタンプを付与したり、定期的にバックアップを取ったりすることが求められます。最近の会計ソフトやクラウドサービスの多くは、この法律の要件を満たすような機能を備えています。これらのサービスを利用すれば、比較的簡単に法律に準拠した電子保存を行うことができます。
青色申告のメリットと申請方法
――青色申告のメリットと申請方法について教えてください。
渡邊:青色申告は、事業所得のある方が選択できる申告方法で、いくつかの大きなメリットがあります。最大のメリットは、55万円の特別控除(要件を満たせば65万円)を受けられることです。これにより、課税所得を大きく減らすことができます。
また、青色申告を行うことで、損失の繰越控除や純損失の繰戻還付など、さまざまな税制上の特典を受けることができます。さらに、青色申告を行うことで、自身の事業の収支状況をより正確に把握できるようになり、経営の改善にも役立ちます。
青色申告の申請は、原則として、その年の3月15日までに所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。ただし、新規に開業した場合は、開業した日から2カ月以内に申請すれば、その年から青色申告を行うことができます。
――副業の経費管理や税負担を軽減させるうえで注意すべき点はありますか。
渡邊:経費の計上や節税対策を行う際に最も重要なのは、適切性と透明性です。経費を過大に計上したり、不適切な節税策を取ったりすることは、税務調査の対象となる可能性があります。
また、副業の収入が増えてきた場合、雑所得から事業所得への移行を検討する必要があります。一般的に、年間の収入が300万円を超えるあたりから、事業所得として扱われる可能性が高くなります。
事業所得になると、青色申告を選択できるなどのメリットがありますが、同時に記帳や経費管理の要件も厳しくなります。わからないことがあれば、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
適切な経費管理と税負担軽減策を行うことで、副業をより効率的、合法的に運営することができます。