bizSPA!

ライブコマースからタクシーまで!実は副業大国【世界の働き方事情・中国】

コラム
ライブコマースからタクシーまで!実は副業大国【世界の働き方事情・中国】

海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、近くて遠い国・中国の休日事情を現地の日本人学校に教員として勤務した経験のあるライターが紹介します。

日本で副業解禁の流れが出てきたのは2018年からですが、中国ではすでに2016年ごろから、ライドシェアのドライバーやライブコマースのライバーとして副業を始める人が現れ始めました。特にライブコマースは副業の枠に留まらず、市場規模は拡大し続けています。この記事では、中国の副業事情を紹介します。

スマートフォンとプラットフォーム、そして電子決済

筆者が中国に滞在していた2017〜2022年にかけて、電動バイクに乗った配達員を目にしない日はありませんでした。筆者も、ネットスーパーや外食の宅配サービスを頻繁に利用していました。スマートフォンのアプリで商品やメニューを選択し、決済はモバイル決済サービス「WeChat Pay(ウィーチャットペイ/微信支付)」か「Alipay(アリペイ/支付宝)」で済ませます。早ければ30分ほどで、商品やお弁当が自宅のドアまで届きました。

タクシーで移動するときは、「滴滴出行(ディディチューシン)」という配車アプリをよく利用していました。通常のタクシーよりも安いので、ライドシェアを選択することもありました。このときも支払いは電子決済。

今思うと、副業としてそれらの仕事に携わっている人がいたはずです。副業や兼業によって、都市部の市民の生活が成り立っていたともいえるのかもしれません。

中国における副業の種類は、ライドシェアの運転手や配達員のほかにも、ネットショップ運営や清掃、オンライン講師など多岐に渡ります。

背景には、仕事を探すにしても、商品の購入やサービスを受けるにしても、すべてスマートフォンがあれば完結してしまう環境があります。サービスを提供する人と消費者のマッチングがオンラインのプラットフォームを介して行われ、少額決済もアプリで行えます。このような環境が、副業を始めるハードルを下げているといえるでしょう。

拡大を続けるライブコマース市場

近年注目を集めた副業のひとつにライブコマースがあります。2016年頃から、日中は別の仕事を行い、帰宅してから自宅でライバーとして副業を行う人が話題になりました。

ライブコマースは、EC(ネット通販)とライブ配信を組み合わせた販売手法のことです。 配信者である「ライバー」が、ライブ形式で視聴者に商品を紹介しながら販売します。 視聴者は、チャット画面を通じて、ライバーとリアルタイムでコミュニケーションを取ることができる点が特徴です。

2016年は中国のライブコマース元年ともいわれ、アリババ傘下のECサイト淘宝(タオバオ)が「淘宝直播(タオバオライブ)」を立ち上げ、同年にEC大手の京東(JD.com)なども参入しています。現在は、バイトダンス(字節跳動)の「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」などのプラットフォームも人気を集めています。

2020年には、新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会や経済の活動が制限される中、家にいながら楽しめるライブコマースがより一層注目を集めました。

市場は拡大傾向にあり、2022年のJETROのレポートによれば、2025年までに、ライブコマースのGMV(流通取引総額)が6兆4,172億元(1元20円換算だと、およそ1,283兆4,000億円に相当)に達する見込みとのことです。

これから中国の副業はどうなる?

日本より副業が身近な中国ですが、規制や課題もあります。まず、公務員は副業を禁止されていますし、副業を始める人が増え出した2016年前後では、従業員の副業や兼業を公に認める企業は少なく、法整備も進んでいませんでした。

しかし、2024年9月、中国政府は、就業形態の多様化を踏まえ、「フレキシブルワーク」を推進する方針を打ち出しました。副業や兼業、フリーランスなど、多様な就業形態を認め、労働市場の活性化と経済成長につなげる意図があります。

この政府が打ち出した方針において特筆すべきは、以下の2点です。

・重点分野・業界や中小企業での就業や起業を奨励
・就業が困難な人々や、卒業後2年間以内に就職していない大卒者が「フレキシブルワーク」をする場合、社会保険補助を支給する

これまで曖昧だった副業や兼業、フリーランスの保障環境が改善されつつあり、特定の分野での起業も奨励されています。いわば、政府のお墨付きでスモールビジネスが始めやすくなったともいえるでしょう。

「副業」の枠に留まらず、2つの仕事を当たり前のように行う人々が今後も増えていくかもしれません。

[参考]

新たなEC手法として存在感を高めるライブコマース(中国) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

中国、就業促進について意見発表、完全雇用目標に各種政策を連携(中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

奄美大島出身。大阪府在住のライター。 タイと中国の日本人学校に教員として通算8年間勤務。 帰国後、フリーのライターへ。 補習校講師として、オンラインで国語を教えています。

おすすめ記事