【世界の働き方事情・フランス】日本以上に厳しい就職!働きながら学校に通う制度も
海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、意外と知られていないフランスの職業事情を現地在住ライターが紹介します。
先進国の中でもアメリカやイギリスの職業事情はメディアで話題になりますが、フランスの職業事情は知らないという人が多いのではないでしょうか。フランスの就職事情は実はシビア。日本とは違った職業事情をお伝えします。
フランスの就業者は製造業と商業が多い
フランス国立統計経済研究所(INSEE)の2018年の調査によると、産業別に見ていくと、第三次産業が76.1%とトップ、中でも商業が12.7%と一番多く、続いてサービス業(10.0%)、行政(9.1%) となっています。製造業が13.3%で、建設業が6.7%、農業が2.5%という結果となりました。
フランスの特別な雇用形態「アルテルナンス」
フランスの雇用形態は以下のように分かれています。
2021年の調査によると、一番多い雇用形態は、CDI(無期限雇用契約)の73.7%、次に多いのはフリーランスの12.6%となっています。CDI は、日本でいうところの正社員に近いかもしれません。
フランスの雇用形態で特別と言えるのが、アルテルナンス(Alternance)という働きながら学校に通う制度です。
フランスでは新卒採用というのはレアなケース。日本のように企業が一括で新卒採用して新人育成をするというような制度はなく、フランスの企業は基本的に即戦力になるような人材しか求めていません。
そのため、学生のうちにインターンで職業経験を積み、卒業の時点で会社の即戦力になれるような能力を身に付けなければならないのです。お給料が発生して職業経験を詰みながら学校に通えるというのは、学生にとって魅力的な制度。アルテルナンスを利用する学生が年々増えています。
学歴社会と厳しい就職事情
INSEEによると、2022年の平均的な月給は2,630ユーロ(約45万円)でした。これはあくまでも平均的な報酬で、カードル (Cadre)と呼ばれる管理職の平均が突出して4,490ユーロ(約77万円)と高く、非管理職(Non cadre)が1,880ユーロ(約32万円)、労働者が1,940ユーロ(約33万円)と、2倍ほどの差があるのが特徴です。
フランスの雇用形態で特筆すべきことは、管理職と非管理職という区分です。日本では、非管理職として入社し、中間管理職に昇級し、やがては管理職にキャリアアップするというのが一般的ではないでしょうか。
フランスは、基本的に学歴によって管理職と非管理職として採用され、非管理職から管理職へとキャリアアップするということはかなりレアなケースなのです。非管理職は何年働こうが基本的には給料はそこまで上がりませんが、管理職は右肩上がりに年々上がり続けます。
フランスは日本よりシビアな学歴社会と言われています。グランゼコールと呼ばれるエリートの高等教育機関や大学院を卒業した者のみが管理職として採用されるからです。
フランスは卒業の時点で、即戦力になれるような能力を身に付けなければならなかったり、管理職と非管理職では報酬にも大差が出るなど、日本に比べると大変厳しい就職事情だと言うことができます。
次回はフランス人の働き方についてお話したいと思います。
[参考]
INSEE
https://www.insee.fr/fr/statistiques/7457170
https://www.insee.fr/fr/statistiques/6453694?sommaire=6453776
https://www.insee.fr/fr/statistiques/4277675?sommaire=4318291
[文/北川菜々子]
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。