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【香港情勢】日本人も拘束!政府による監視が強化しており政治的な発言に注意

コラム
香港・ビクトリアパーク

香港・ビクトリアパーク Photo : Mei Yi / Shutterstock.com

インターネットやSNSで世界中の情報がリアルタイムで手に入る時代、オンライン会議で日本はもちろん、海外のどこにいてもコミュニケーションできるのが当たり前となった。ビジネスパーソンなら海外のビジネス関係のニュースも押さえておきたい。

そこで、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障などに詳しい専門家のピエール・パパンさんに、最近の香港の情勢について解説してもらった(以下、ピエール・パパンさんの寄稿)。

6月4日は「天安門事件」の起こった日

6月4日、これは中国にとって最も敏感な日と言っていい。1989年6月4日、北京の天安門では自由や民主主義を訴える若者たちによる抗議集会が行われたが、共産党政権はそれを武力で強制排除し、多くの若者が犠牲となった。この「天安門事件」から35年が経つのだが、共産党政権は“それはなかった”という前提に立ち、国内での追悼集会を禁止してきた。

一方、香港では禁止されておらず、長年この日に追悼集会が開かれてきたが、2020年に香港で国家安全維持法(香港の安全を守るための法律)が施行されて以降、香港でも追悼集会が禁止された。

日本人男性が一時拘束

それから4年の歳月が流れた。香港政府は近年、6月4日に合わせて香港島にあるビクトリアパーク周辺のパトロールを強化し、追悼集会を開催しようとしたり、反共産党を訴えたりする動きを徹底的に抑えている。

今年も6月4日、習近平政権を批判する抗議活動をした容疑で23歳から69歳の男女4人が逮捕された。69歳の女性は路上で“反習近平”のスローガンを大声で叫んでいたところを香港警察に逮捕された。また、ビクトリアパーク内で太鼓を鳴らし、お経を唱えながらねり歩いていた日本人男性が警察に連行され、一時拘束されていたこともわかった。

“香港の中国化”が強化

このように、香港では公権力の権限が強化され、香港市民や外国の駐在者たちへの監視の目が強くなっているのだ。以前、香港では中国政府に批判的な発言をしたり、ネットにそういった書き込みをしても、さほど大きな懸念はなかったが、国家安全維持法の施行のように“香港の中国化”は習政権になっていっそう強化され、中国本土にいる感覚を持つ必要が生じている。

香港に旅行したり、駐在する人々も多いと思うが、以前のような感覚で過ごせる状況ではないといえるだろう。過度に心配する必要もないが、香港に滞在する際は政治的な発言を控えたり、ネット上にそういった書き込みはしないなど、十分に注意する必要があろう。

[文/ピエール・パパン]

フランスのパリやカンヌなどに留学し、フランスやその他の国々を旅し、ライティング活動を行っている。

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