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20代向け啓発本を50冊読んだら「20代にやっておくべきこと」は結局この5つだった

コラム

書店など本の売り場に出向くと「20代でやっておくべきこと〇個」だとか「25歳までにやるべき〇〇」だとかいったタイトルの自己啓発本が目に入る。

この手の本は膨大に存在するが意外に、異なる著者の異なる言葉で同じ教えが書かれている場合も多い。結局、20代のうちにやるべき課題は決まっているという話だろうか。

そこで今回は、20代向けの自己啓発本を20代のころに読みあさった経験があるライターの重田信さんに、タイトルに「20代」と書かれている自己啓発本50冊に目を通してもらった。

さらに、各本に書かれた教えを分析してもらい、抽象度を上げて整理してもらった上で、20代でやっておくべき普遍的な課題をまとめて示してもらった。

若いビジネスマンはぜひ最後まで読んでほしい(以下、重田信さんの寄稿)

メンターに出会い、まねする

大ベストセラー〈人は話し方が9割〉で有名な永松茂久さんの著書に、

“伸びる人、やがて社会において頭角を表す人はすべてと言っていいほど、一流の師を持っている”(きずな出版〈20代を無難に生きるな〉134ページより引用)

という言葉がある。「師匠」「メンター」など表現は異なるが、20代向けの自己啓発本の著者の多くが「人生のロールモデルに出会う」重要性を語っている。

なぜ「メンター」の存在が大事なのだろうか。

〈20代のうちに知っておきたい100の黄金ルール ー1万人のビジネスパーソンから学んだ成功法則〉(PHP研究所・2012年)の著者である大塚寿さんはその理由として成長スピードを挙げている。

“そのほうがゼロからのスタートなので吸収力が高く、何かに染まっていたりクセがついていたりすることもないので、成長する伸びしろが最大になるのです”(〈20代のうちに知っておきたい100の黄金ルール ー 1万人のビジネスパーソンから学んだ成功法則〉179ページより引用)

「この人をまねしたい」「この人のようになりたい」と心の底から思える人に20代の若さで出会うからこそ、成長のスピードが早くなるのだ。

メンターや師匠の仕事や生き方を徹底的にまねる大切さは、その他の多くの本でも推奨されている。では、実際には、どれくらいまねればいいのか。

〈20代に伝えたい50のこと〉(ダイヤモンド社・2018年)の著者・秋元祥治さんは次のように書く。

“『学ぶ』という言葉の語源は『真似ぶ』だとも言われます。目指すべき存在に出会った時に、徹底的に真似をし、 模倣しきることから成長と成果は生まれるのだと考えます。日常の中でもそうです。会議の議事録の取り方や、プレゼンテーションの仕方。リスト作成の表の作り方から、電話かけに至るまで。まず『あの人のように仕事ができるようになりたい 、すごい!』という先輩を見つけ、徹底的に真似することが求められるのです”(〈20代に伝えたい50のこと〉178ページより引用)

仕事のやり方から生き方までまねしたくなる憧れの上司や先輩が職場に居る人は幸運だ。一度「この人だ」と決めたらとことんまねするといいらしい。

失敗・困難・不都合を経験する

「成功に失敗はつきもの」と言う。実際、多くの著者が失敗の経験について語り、失敗の重要性を力説している。

例えば〈20代をどう生きるか楽しむための61の方法〉(リベラル社・2021年)の著者・中谷彰宏さんは、失敗・困難・不都合を「20代の三種の神器」とまで表現する。

“『失敗』の特典は、気づきがもらえることです。『こういうところが自分は苦手なんだな』と、気づけるのです。『困難』の特典は、粘り力が鍛えられ、『もう少しやってみよう』という継続力が生まれることです。『不都合』の特典は、場当たり的なものも含めて、『これはこうしたらいいのかな』という工夫が生まれることです”(〈20代をどう生きるか楽しむための61の方法〉Kindle 版No.1248-1252より引用)

ネガティブな出来事にこれだけの学びがあると分かっていれば、目の前に壁が立ちはだかってもくじけずに済むはずだ。

感情の動く経験をする

多くの著者が、五感を刺激する経験の重要性も訴えていた。

例えば〈No.1コンサルタントが教える 20代の後悔しない働き方〉(2015年・青春出版社)の著者・小宮一慶さんは、脳科学の観点から経験の大切さを以下のように説明している。

“文字や映像で得る情報より、経験で得る情報は、より記憶にとどまるといわれます。それは、 脳科学の研究によると、最も記憶に深く残るのが「情動とセットの記憶」であることが分かっているからです。「あれは大変だったなあ」「最高に笑えたなあ」「やたらと暑い日だったな」「なんともいえないニオイがしたよな」ー こうした感情の動き=”情動”は、記憶と五感をひもづけさせます。記憶を思い出すきっかけが増えるわけです。こうした情動は、実際の経験でしか得にくい。経験が、より深い学びになる理由です”(〈No.1コンサルタントが教える 20代の後悔しない働き方〉109ページより引用)

「旅に出る」「一流に触れる」といった気分を高揚させる経験の大切さについて書かれた本も多くある。

知りたい情報にすぐアクセスでき、ウェブ会議やテキストでのコミュニケーションが一般的になった今だからこそ、リアルで人と会う価値もより一層高まっている。

匂いや肌触り、味覚といった、画面上では経験できない何かを積極的に求め、感情の動きを積み重ねたい。

YouTubeではなく本で学ぶ

学びの場面では、20代の読書や勉強の大切さについても、多くの著者が繰り返しメッセージを送っている。

なぜ、多くの成功者は読書を勧めるのだろうか。

例えば、大学時代に1万冊以上の本を読破した千田琢哉さんは著書〈新版 人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。20代で身につけたい本の読み方88〉(日本実業出版社・2021年)の中で次のように書く。

“今なら断言できることがあります。あなたの人生で、これから先に起こる未知の難題に対するすべてのヒントは、すでにどこかの誰かが本に書いてくれているということです”( 〈新版 人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。 20代で身につけたい本の読み方88〉Kindle版 No.35-40 から引用)

言ってしまえば、絶体絶命に思えるような困難な状況に遭遇しても、これまでに残されてきた人類の英知の中に手掛かりがあるのだ。そう思えば心も軽くなる。

とはいえ今は、動画全盛時代だ。YouTubeをはじめとした動画プラットフォームには、専門的で難しい分野の内容を分かりやすく解説しているチャンネルがたくさんある。

本だけが学びのツールではない。本だけではなく動画での学びはどうなのか。

この点、動画(特にYouTube)だけでのインプットに警鐘を鳴らす著者も居る。

例えば〈すぐに結果を出す新入社員は、「これ」だけやっている 20代のうちに身につけておきたい「しごと」のコツ〉(秀和システム・2022年)の著者・伊庭正康さんは次のように語る。

“YouTubeには、徹底的に『えこひいき』をするアルゴリズムが働いています。視聴者の食いつきのいい、簡単でキャッチーな題材にしないと、YouTubeは動画を露出してくれなくなるのです。なので、ほとんどの投稿者は、『本当に伝えたい』ことを題材にできず、再生回数を稼げるネタしか投稿しない状況に陥るのです( コレがイヤでやめた有名ユーチューバーも少なくありません)”(〈すぐに結果を出す新入社員は、「これ」だけやっている 20代のうちに身につけておきたい「しごと」のコツ〉148〜149ページより引用)

この言葉を、どのように考えるだろうか。併せて、学びの参考にしてもらいたい。

孤独になる

読書の必要性を前述した。しかし、当たり前だが読書には時間が掛かる。30代になると、会社で重要な仕事を任されたり、子育てで忙しくなったりする人も増えてくる。

20代は、自分の時間を確保しやすい年代である点は間違いがない。五感を刺激する経験を重ね、読書・勉強をするだけでなく、1人になって自分と向き合う時間もとれる。

〈20代から生き方に差がつく105の法則〉(大和書房・1996年)の著者・桜井秀勲さんは、内省するための手軽な方法論を紹介しながら、内省の大切さを説く。

“2階の窓ぎわから下を行く人の群れを見ることだ。喫茶店ではなく、職場でも自宅でもいい。要は無目的に、人の歩く姿をぼんやり眺めるのである。たったそれだけで内省の時間を持つことができよう。いったいなぜ人は急ぐのか。それを考えるだけでも大きなプラスになる”(〈20代から生き方に差がつく105の法則〉194ページより引用)

現代人は、時間と視線の奪い合いにさらされていると言っても過言ではない。誰もが持っているスマートフォンのアプリやコンテンツは、なるべく長くユーザーに滞在してもらおうと、あの手この手を使ってしのぎをけずっている。

この〈bizSPA!フレッシュ〉のコンテンツも同じだ。

だからこそ今は、30年前に存在しなかった「スマホを見る」という行為から意図して離れる必要もある。

〈自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと〉(サンクチュアリ出版・2012年)の著者である四角大輔さんも、1日の中でオフラインになる時間の大切さを語る。

“オンライン中には思いつかなかったアイデアや、本当はもう”やめたい”と思っていることに、ふっと気づいたり。いつの間にか放置していた”やりたかった”ことを思い出すこともある。周囲に流されることなく、自分の人生を自由にデザインするためには”周囲とつながらない時間”がどうしても大事なんだ”(〈自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと〉176ページより引用)

現代で孤独になるためには、物理的に1人になるだけでなく、身の回りのデバイスとの距離も考えなくてはならない。

おまけ

今回の記事を書くために集めた本の中で最も古い著作は、鈴木健二さんの〈男は20代に何をなすべきか ”人間の基本”を身につけるために〉(大和出版・1982年)だった。

この本の中で、20代とはどんな時期なのかを表した個所が、2024年(令和6年)の今読んでも実に示唆に富むと感じたので長めに引用する。

「人間を物質にたとえるならば、20代は気体であり、30代は液体であり、40代以後は個体である。20代は遙か成層圏にまでも届いて行くかと思えば、一方ではどんな小さなスキ間にも入りこめるほどに、マキシマムからミニマムにまで融通のきく気体のような時代である。そこには無限の可能性が秘められているほど雄大な人生を歩むことも出来る力があるし、 逆に世間のほんの片隅で小さく日陰でしか生きられなくなってしまうような人間を自分でこしらえ上げられもする」(〈男は20代に何をなすべきか ”人間の基本”を身につけるために〉226ページから引用)

「20代」というだけで変幻自在に、どこまでも身軽にたどり着けると思えば、とてもワクワクしないだろうか。

20代は、軸が定まらず不安定な時期かもしれない。しかし、違う見方をすれば、柔軟さや環境への適応力がどの年代の人よりも高い。

ぜひ、今のうちにいい人やいい言葉に出会い、酸いも甘いも経験しながら、充実した20代を過ごしてほしい。

[文/重田信]

[参考文献]
伊庭正康〈すぐに結果を出す新入社員は、「これ」だけやっている〉(秀和システム)
千田琢哉〈一生イノベーションを起こし続けるビジネスパーソンになるために20代で身につけたい読書の技法〉(アイバス出版)
HRインスティテュート〈20代でマスターしたい仕事のルール「考え方・伝え方」のきほん〉(翔泳社)
中谷彰宏〈20代にやっておいてよかったこと〉(PHP)
中谷彰宏〈20代をどう生きるか〉(リベラル社)
成田直人〈20代実績ゼロから知っておきたい仕事のルール〉(中経出版)
和田秀樹〈和田秀樹が20代でやったすべてのこと〉(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
桑原晃弥〈20代を生きる君へ、今輝く天才たち84人の「未来の切り開き方」〉(リベラル社)
寺澤伸洋〈40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法〉(KADOKAWA)
桜井秀勲〈20代から生き方に差がつく105の法則 自分の人生をどう実現するか〉(大和書房)
吉野敬介〈20代で受けておきたい仕事の授業〉(小学館集英社プロダクション)
小杉樹彦〈20代で身につけたい働き方の基本「君がいてよかった」と言われる仕事のルール〉(新評論)
土井英司〈20代で人生の年収は9割決まる。〉(日本経済新聞出版本部)
ひきたよしあき〈20代だから許されること、しておきたいこと「ブレない」「流されない」「迷わない」自分になる6つのヒント〉(大和出版)
倉田哲郎〈今、あなたが内定をもらったら  20代の働くルール58〉(ビーケイシー)
小宮一慶〈No.1コンサルタントが教える20代の後悔しない働き方〉(青春出版社)
本田健〈20代にしておきたい17のこと〉(大和書房)
本尾読〈20代の読書が人生を決める!〉(アイバス出版)
メグ・ジェイ〈人生は20代で決まる〉(早川書房)
永松茂久〈20代を無難に生きるな〉(きずな出版)
四角大輔〈自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと〉(サンクチュアリ出版)
川北義則〈「20代」でやっておきたいこと〉(三笠書房)
金川顕教〈20代の生き方で人生は9割決まる!〉(かんき出版)
若松孝彦〈伸びる20代の生き方プロ社員になるための77のルール〉(タナベ経営)
大塚寿〈20代のうちに知っておきたい100の黄金ルール〉(PHP研究所)
吉山勇樹〈あたりまえだけどなかなかできない 25歳からのルール〉(明日香出版社)
永倉健太〈人生は28歳までに決まる〉(イーストプレス)
千田琢哉〈死ぬまで仕事に困らないために20代で出逢っておきたい100の言葉〉(かんき出版)
千田琢哉〈人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。―20代で身につけたい本の読み方88〉(日本実業出版社)
千田琢哉〈20代で知っておくべき「歴史の使い方」を教えよう。〉(学研)
千田琢哉〈20代で人生が開ける「最高の語彙力」を教えよう。〉(学研)
千田琢哉〈20代で身につけるべき「本当の教養」を教えよう。〉(学研)
中谷彰宏〈20代でしなければならない50のこと〉(ダイヤモンド社)
秋元祥治〈20代に伝えたい50のこと〉(ダイヤモンド社)
川北義則〈20代の君たちへ これだけはやっておきなさい〉(KADOKAWA)
垣畑光哉〈メンター的起業家に訊く 20代に何をする?〉(幻冬舎)
桑原晃弥〈20代で「その他大勢」から抜け出す名言105〉(経済界)
久保憂希也〈20代で絶対に身につけたい数字力のルール ビジネスに必要な「仕事の数字」が100%わかる本〉(大和書房)
藤屋伸二〈20代から身につけたいドラッカーの思考法〉(KADOKAWA)
鈴木健二〈男は20代に何をなすべきか “人間の基本”を身につけるために〉(大和出版)
小宮謙一〈伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人の10の違い〉(集英社)
一田憲子〈もっと早く言ってよ。 50代の私から20代の私に伝えたいこと〉(扶桑社)
本田有明〈20代 これだけはやっておきたい50のポイント〉(PHP文庫)
泉房穂〈20代をどう生きたらいいのか ―こんなオッチャンが語ります〉(さくら舎)
岩瀬大輔・他〈20代でやっておきたい50の習慣〉(宝島社)
飯塚勇太〈20代が仕事で大切にしたいこと ありのままの自分で成果が出る3つのルール〉(ダイヤモンド社)
致知編集部〈一流になる人の20代はどこが違うのか〉(致知出版社)
本田健〈20代にとって大切な17のこと〉(きずな出版)
日本青年心理学会/企画〈君の悩みに答えよう 青年心理学者と考える10代・20代のための生きるヒント〉(福村出版)
林真理子〈20代に読みたい名作〉(文藝春秋)

奄美大島出身。大阪府在住のライター。 タイと中国の日本人学校に教員として通算8年間勤務。 帰国後、フリーのライターへ。 補習校講師として、オンラインで国語を教えています。

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