メモには「A4コピー用紙」が最強説。マネジメントの一流が語るメモツール&メモ術とは
メモを取る、言葉にすると簡単だが、メモの取り方、何を使ってメモを取るか、どのように取るかなど、掘り下げるととても深い世界だ。特に、若手ビジネスパーソンはまだ、確たる方法論を持たず、自己流の延長で試行錯誤を続けている最中のはずだ。
そこで今回は、株式会社office Root(オフィスルート)代表取締役社長の甲州潤(こうしゅうじゅん)さんに、メモをどう取るか、どんなツールでメモを取るかを聞いた。
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甲州さんは、PM(プロジェクトマネジャー)の補佐役としてメンバー間や会社間の橋渡しを行ったり、期日管理などプロジェクト全体のマネジメントを担ったりするPMO(ピーエムオー)のプロフェッショナルで〈DX時代の最強PMOになる方法〉(ビジネス教育出版社)を出版した著者でもある。
いわば、調整業務やマネジメントの最強の専門家である。特に、どんなツールでメモを取るかそれほど深く考えていない若手ビジネスパーソンは最後まで読んでもらいたい(以下、甲州潤さんの寄稿)
目次
どう取るか、どんなツールで取るか
初めまして。株式会社office Root(オフィスルート)代表取締役社長の甲州潤(こうしゅうじゅん)と申します。
前回の記事では、メモを取る理由についてお伝えしました。
メモを取るべきか・取らないべきかについてはそちらに譲るとして今回は、本題の「メモの取り方」に入ります。その冒頭で、1つ言わせてください。
メモは「どう取るか」だけではなく「どんなツールでメモを取るか」も非常に重要です!
もし、あなたが今、どんなツールでメモを取るか深く考えずに、手近にある適当なツールでメモを取っているならとてももったいないです。なぜなら、もっと上手く、効率的にメモを取れる機会を逃しているからです。
そこで今回は、甲州流の効果的な「メモツール」の選び方をご紹介した上で、効果的なメモを誰でもつくれる「メモの取り方」をお伝えしたいと思います。
デジタル・アナログツールは適するシーンが異なる
私がなぜ、そこまで「ツール」にこだわるのか。それは何より、メモには「スピード」が求められるからです。
前回、メモは「自分で記憶や整理できない情報」を記録し「大事なポイントを取捨選択する」「他の人にも正しく伝える」とお伝えしました。
プラスしてメモには「いかに早く相手に伝えるか」という役割もあります。
その役割を考えると、シーンや目的でメモツールを使い分ける姿勢が大切なのです。しかし、使い分けると言っても種類はさまざま。ざっと挙げただけでも次のように分類されます。
■デジタルツール……パソコン・タブレット(スタイラスペンを使用)・スマートフォンなど
■アナログツール……メモ帳(A6)・付せん・手帳・ノート(A4)・コピー用紙(A4)など
※サイズは甲州おすすめ
デジタルとアナログに分けた理由は適するシーンが異なるからです。私は、次のように使い分けています。
・「すでに決まったこと」はデジタルで!
会議やミーティングなどにおける「次は何をするか」「自分は何をすべきか」といったメモはデジタルツールが適しています。
会話する内容が限定的で、それ以上は基本的に広がらないので、ポイントを選びながら入力が容易にできます。メモを取りつつリアルタイムで資料もつくれます。非常に効率的です。
・「まだ決まっていないこと」はアナログで!
ブレーンストーミングのようなアイデア出し、お客さまやメンバーへのヒアリングなどのメモは、アナログツールが適します。そのような場では、予想外の意見や新しい情報が次々出る可能性もあり、話に際限がありません。
そのためアナログツールの方が情報の追加や削除、関連付けなどしやすく、パソコンで行を増やしたり削除したりするよりはるかに早いです。
若手社員の方は、デジタルツールを業務に使うシーンが多いと思います。デジタルツールでスピーディに記録する姿は確かに格好良く見えます。
しかし、ミスタイプや「ちょっと待ってください」と言いながらモタモタ記録するくらいなら、会話の流れを途切れさせずメモできるツールの方が結果的に仕事の成果は出ます。
また、同じデジタルツールでも「スマホ」でメモを取ると、周囲から悪い印象を持たれがちです。
「今どき、仕事の場でスマホを使うのは普通でしょ」という若い方の意見は十分分かります。しかしまだ、一般的に、上司世代や会社に居る多くの人はいい印象を持たない傾向があると思います。
加えて、ビジネス文章の作成となると「スマホ」は、入力スピードの遅さも周囲から気にされます。パソコンの方が圧倒的に早いと私も感じます。
これからメモ術を深めていきたい若手ビジネスパーソンはまず、スピーディーに紙などにメモを取り、自席に戻ってからデジタルツールで整理してみてください。
時間はかかりますが、1つずつ丁寧にこなしていくと、効率的なメモのコツがどんどん見えてくるはずです。同時進行でタイピングや操作の習得も忘れずに!
最強メモツールはA4コピー用紙×水性マーカー×付せん
では、実際に私が、どのようにメモをしているのか、ご紹介します。
私が愛用するメモツールは「A4コピー用紙」です。PMOの仕事は、チームや部署、プロジェクト、他社まで横断する場合も時にあり、広い視野が求められます。
また、決まった内容の話よりは「これからどうするか?」という枠に収まらない話が多いため、効率とスピードを考えてアイデアを思いのままにダーっと広げられるA4用紙にたどり着きました。
ノートやメモ帳のように次のページにまたがる心配もありません。場合により用紙と用紙をつなげて大きくしたり、切ったり張ったり……、自由自在です。
ついでにご紹介すると、細字の水性マーカー(三菱鉛筆uniのプロッキー極細・細字丸芯)の青と赤を使います。非常に書きやすく見えやすく個人的に気に入っています。
黒色を使わない理由は、背景と同化して見落としがちだから。あと昔、何かの本で「黒は思考停止の色」と読んで使わなくなりました。こちらは完全に余談ですが(笑)
また、付せんも多用します。使うサイズは「100×75ミリ」です。理由は、自分の使いやすいA4用紙やパワーポイントのスライドに比率が似ているからです。
図やテキストをまとめたり、A4用紙に張り付けたり、1つのスライドに見立ててプレゼン資料の下書きをしたり……、かなり使えますよ!
9つの項目を網羅するシンプルメモ術
メモツールを選んだら、早速メモを書いていきましょう。
「メモの取り方」なんて大層な書き方をしましたが、その中身はいたってシンプルです。
以下の9つの項目を網羅するだけ。これさえ押さえればたいていの内容は漏れなくメモできますからぜひ、覚えてください。
例えば、この表を、いつも見る場所に張っておくも良し、テンプレートとしてA4用紙に印刷しておくも良し、パソコンにテンプレートを仕込んだメモ用ファイルをつくっておいても良いでしょう。
特に「What」「When」「Where」の3つはどんなメモでも最低限必要です。テンプレートの冒頭に置くことをお勧めします。
その上で、自分のオリジナルテンプレートにアレンジしてください。仕事を進める中で「上司からいつもこんなことを言われる」「これ前、怒られたな……」という経験が1つや2つあると思います。それらを項目に付け加えるイメージです。
7W2Hが体に染み付くと、メモの本質である「情報整理」や「重要事項の取捨選択」が自然にできるようになります。なおかつ、そのようなメモは、誰が見ても分かりやすいメモとなるのです。
付せんなどのアナログツールは「伝言事項」にNG
以上、今回は、メモツールとメモの取り方についてお伝えしました。
・シーンに合わせて最適なメモツールを使い分ける
・「7W2H」を意識して、ベストなメモがいつでも取れるビジネスパーソンに!
余談ですが、人への「伝言事項」には、付せんなどのアナログツールはNGです! なぜなら、紛失のリスクがあり、トラブルになりがちだからです。
伝言は、デジタルツールを使い〈Slack〉やチャットなど必ず「残る」形で行うとベスト。さらに言うとDMではなく、メンバーみんなが見ているオープンなスレッドで行うといいです。
超絶メモが苦手だった私も、皆さんにメモ術をお伝えするまでになれました。ツール選びやテンプレを使って繰り返し取り組むと、誰でもメモを上手に取れるようになります。
最初は少し大変ですが、なんの世界でも一緒のはず。ぜひ、ご紹介した内容を参考にメモマスターを目指してみてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
[文・甲州潤]
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