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月100時間の残業代がゼロ…三菱電機の過労自殺だけじゃない「裁量労働制トラブル」

ビジネス

 また、大規模な建築プロジェクトを数多く手掛けるプランテック総合計画事務所に勤務する20代の女性は、月100~150時間の残業で、1日20時間労働を強いられることも少なくなかったそうです。それなのに1日のみなし残業時間は8時間だったため、それ以上の残業代は支払われませんでした。

 このように、裁量労働制を適用しているにもかかわらず、過酷な労働時間や、裁量が極端に少ないケースというのもあります。この女性は、結果的に精神疾患を患うほど追い込まれてしまいました(参照:「ブラック企業ユニオン」)

大手企業も例外ではない…野村不動産の事例

野村不動産

野村不動産が入居する新宿野村ビル CC BY 3.0

 これまで中小企業を紹介してきましたが、大手企業も例外ではありません。

 大手不動産会社である野村不動産の東京本社に勤務していた50代の男性は、入居者とのやり取りや仲介業者の対応、またトラブルによる呼び出しなどで、1か月最大180時間という長時間労働になり、2016年9月に自殺してしまいました。

 野村不動産では、本来は「事業活動の中枢にある労働者」にしか適用できない企画型裁量労働制を営業担当の社員にも適用していたとして、東京労働局から是正勧告と事業者の公表の措置が取られました。そのことによって、現在では同社は企画型裁量労働制を廃止するなど、大きなニュースとなりました。

「おかしいかな?」と思ったらまずは相談を

 制度が正しく運用されれば、会社にとっても労働者にとっても、メリットの大きい裁量労働制度ですが、実際には、労働者に過度な負担を強いるケースが少なくありません。それは、中小企業に限らず、よく知られた大企業も同様です。

 プランテック総合計画事務所で働いていた女性は「ブラック企業ユニオン」のブログで、「内部の人々にはこれが当たり前だと言われ続けたため、騙し騙し働いて来た結果、自分はまだ大丈夫と思って行った病院でその日に即入院を勧められました」とコメント。また、「自分が通常ではあり得ないような労働時間で働き、またその対価を支払われないことがあまりに恥ずかしかった」とも述べています(参照:「ブラック企業ユニオン」)。

 自分がブラックな職場環境に置かれていることは、周囲に言い出しにくいことですし、自分自身でそのことを認めてしまうこともツラいことです。しかし、身体を壊してしまってからでは遅く、体調が回復するのにも、長い期間を要する場合もあり、最悪の事態に発展してしまうケースもあります。

 もし自分の労働環境に少しでも疑問があるという方は、知り合いや上司、労働基準監督署など一度相談してみることをおすすめします。

<TEXT/湯浅肇>

写真をメインに数多くの時事ネタやマルチメディア関連の記事も執筆。常に斬新な切り口で情報発信を目指すアラサー男子

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