司馬遼太郎の名作をコミカライズした作者に聞いた、仕事への向き合いかた
「作画」という仕事の良さ
――自分の作品でデビューしたいという想いはあったのでしょうか?
奏:「とりあえず漫画を描いてお金を稼げるなら、なんでもいいや」と思っていました。本当に「もう漫画はあきらめよう」と思っていたタイミングだったので、藁にもすがる思いでしたね。20代前半の頃は、自分のなかでも描きたいことがありました。でも歳を重ねるにつれて「これを伝えたい」とか「これを描きたい」とかがなくなってきて。ちょうどいいタイミングだったのかなと思います。
――「伝えたいこと」が重視されがちなお仕事ですが、専門的なスキルを磨くというのも1つの道ですよね。
奏:そうですね。ネームって、出ないときは出ないので。オリジナルで連載するのって本当に大変だなと思います。でも作画だけでいうと、完成しないことはないんです。練習したり、実際に手を動かす時間はかかるんですけど、それもある程度見通しがつく。その分、精神的にも体力的にも負担が少ないのは、いいところだと思います。
いつかは「オリジナル作品」も
――いつかはオリジナル作品も描きたい?
奏:もし今の仕事でお金にもっと余裕ができて、チャレンジする機会があったら、短編とかでいいので自分の作品を描いてみたいですね。お仕事をやっていくうちに、自分の至らないところも見えてきて、今は作画としてのスキルを向上させるのが先だなと思っています。
――スキルアップのために、やっていることはありますか?
奏:今は連載も2本掛け持ちしていて、別で練習する時間はなかなかとれないので、ひとつひとつの仕事を頑張って取り組む感じですね。たとえば、しわや骨格の構造で分からないところは、その都度きっちり資料やネットで調べて練習するとか、そういうのを大事にしています。
<取材・文/Marino>
【秦ヨシキ】
漫画家。『首を斬らねば分かるまい』(原作:門馬司)で作画デビュー。本作『燃えよ剣』以外に、WEB発小説をコミカライズした『経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 ~勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ~』(原作:徳川レモン、キャラクター原案:riritto)を連載中