水深200mが僕の職場…「深海水族館」で働く人たちに込めた想い。作者に聞く
漫画だからこそ伝えられることがある
――そうだったんですね。なぜ教師の道を選ばれなかったのですか?
椙下:教師になる自信がなかったというのもあるんですけど、教育実習中にあまりうまく話せなかった生徒が寄せ書きに「『ブッダ』面白かったよ」と書いてくれた経験がきっかけで、私は教師ではなく漫画家を目指そうと決めましたね。実習中に担当した道徳の授業で、手塚治虫の『ブッダ』のお話を紹介したことがあったんです。
私自身、すごく好きな漫画で、生徒たちに仏教芸術のことも知ってもらいたかったので、紹介したところ以外も読んでもらえるように教室の隅のほうに置いてみたら、その生徒が読んでくれていたみたいで。その寄せ書きを見たときに「私自身が誰かに何かを直接伝えたり教えたりすることが難しくても、もしかしたら漫画になって、それを読んでくれることで伝えられることがあるんじゃないか」と思ったんです。
だから、漫画にも自分が教師だったら子どもたちに伝えたかったようなことを描くようにしています。教師にはならなかったけど、漫画家という職業でも子供たちと関わって、自分の伝えたいことを伝える仕事ができているのは、すごくよかったなと思っています。『マグメル』を読んだ子がたとえば深海生物の研究をしたいと思ったり、水族館で働きたいと思ったり、そういうふうにつながっていったら嬉しいですね。
<取材・文/Marino>
【椙下聖海】
2015年、第10回新潮社漫画大賞Rookie @ GOGO!! にて「水底の彼女」で佳作受賞。2017年、初連載となる『マグメル深海水族館』がスタート。海洋生物、昆虫など、生き物大好き。いちばん好きな生き物は、イグアナ