水深200mが僕の職場…「深海水族館」で働く人たちに込めた想い。作者に聞く
深海生物をモチーフにしたキャラデザも
――主人公の天城航太郎にとって初の後輩となる知波田涼のお話はダルマザメがテーマでしたが、涼くん自身もサメをイメージして描かれているんですか?
椙下:そうですね、ちょっとサメっぽい感じの子を描きたかったので、歯をギザギザにしています。これは初めて言うのですが、ほかにも髪型が生き物とリンクしているキャラクターが時々います。全員ではないし、本当に誰にも言ったことがなくて、気づいてほしいというわけでもないんですけど(笑)。
航太郎くんのちょっとピョンって出ている前髪は、チョウチンアンコウをモチーフにしています。イリシリウム(誘引突起)という、光って餌をおびき寄せるところですね。なぎさちゃんのふわっとしたシルエットの髪型はメンダコを、朝日くんのまるい髪型はオウムガイのつるっとした感じをイメージしています。
――キャラクターの名前も海にちなんでいて、細部まで海への愛を感じます。
椙下:名前はけっこう考えてつけていますね。高校野球の球児の名前で、かっこいい名前があったりするとメモしたりしています。実際に使ったことはないんですけど(笑)。
どんな経験もきっと漫画に活かせる
――そんなところまで漫画に活かされているんですね(笑)。ほかにも漫画を描くのに活きているなという経験はありますか?
椙下:自分自身がやったことないことだと描くのが難しいこともあるので。なるべく自分で体験したことを描きたいと思っています。そういった意味では、どんな経験も漫画に活かせるというか、無駄な経験はないなと思います。あとは、水族館を辞めたあとは本屋さんにあるカフェでアルバイトをしていたので、単行本を出してから、その本屋さんでサイン会を開いてもらって嬉しかったですね(笑)。
――Twitterやサイン会などでファンの方ともよく交流されていますよね。特に印象に残っている読者の反応はありますか?
椙下:こんなに反応をいただけるようになるとは思っていなかったので、本当にありがたいなと思っています。じつは社会と美術の教員免許を持っていて、教育実習に行ったこともあるんです。だから、子どもたちからお手紙をもらったり、学校の図書館に置いてくださっているというのを聞いたときは特に嬉しかったですね。もちろん大人の方が読んでくださるのも、同じようにとても嬉しいです。