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高梨沙羅の失格に…「悪夢のような敗戦をした」元五輪メダリストからの伝言

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私の中の誇りと、平野歩夢選手の大技

 実際、私は長野五輪後の2年間、日本代表から外されました。ゼロから出直して2年後に代表に復帰し、ワールドカップに優勝、世界スプリントで3位に入るなど成績も復調。4年後、再度ソルトレイク五輪に出場を果たします。幼少の頃からの指導してきた方々の「あきらめるな」の言霊が脳裏にあって、投げ出さずに再出発できました。

 失っていた自信を取り戻せたのは、覚悟をもって再び取り組んでやりきれたことで、私の中の誇りです。

 そんな、ルールやジャッジの不可解さによってモヤモヤも残る北京五輪ですが、私がもっとも印象に残り圧倒されたのは2月11日、男子ハーフパイプ・スノーボードで金メダルを獲得した平野歩夢選手です

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平野歩夢選手(代表撮影:雑誌協会)

 彼もまた、ジャッジに泣かされかけました。2本目の試技で、大技「トリプルコーク1440」を決めたにもかかわらず、低い採点をつけられその段階では2位止まり。しかし、最後の3本目でも最高難度の技を連発して、逆転で金メダルを獲得しました。

 素人が見ていても、何の技か詳しく知らなくても、その高さや回転の美しさ、着地の安定感やバランス、他をよせつけない圧巻の金メダルだと誰もが思ったでしょう。2本目の採点の不遇をバネに、でも淡々と哲学者のごとく、3本目に挑んだ平野選手の姿には感動しました。

日本スケート界史上最高の選手に

 もう一人、印象的だったのは、女子スピードスケート1500mで大本命だった髙木美帆選手を上回ったオランダのイレーン・ビュスト選手。これはもう、異次元の走りでした。今季ワールドカップ3戦3勝の種目だった髙木選手が控えていても、先に滑ったビュスト選手のあのタイムが出たのを見た時、厳しいなと感じたくらいです。

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髙木美帆選手(代表撮影:雑誌協会)

 前評判が高い選手が実力を発揮したにもかかわらず勝ちきれず、逆に、集中力と爆発的な滑りで凄みのあるレースをして、頂点を奪い取る選手が五輪では現れます。ビュスト選手の北京五輪はまぎれもなく、その一例です。ただ、彼女も一発勝負で勝てたのではなく、直前の世界スピードスケート選手権で優勝し、ベテランが勢いを増した中で結果が伴ったものだと思います。

 しかしその後、高木選手は17日の女子スピードスケート1000mで、金メダルを獲得。異次元の爆発力で他を寄せ付けない圧倒的なレースで、1つのミスのない完璧な滑りでした。私もこの1000mには思い入れがあります。最初の200m、600mのペース配分、ラスト400mの1周と、記録を出す難しさを知っています。

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1000mで金メダルを獲得した(代表撮影:雑誌協会)

 だからこそ、オリンピックの本番で結果を出した高木選手の素晴らしい滑りに、非常に感動しています。日本スケート界史上最高の選手となりましたね

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