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“メジャーMVP”大谷翔平「強さと成長力」の秘密。本人の言葉4つから解き明かす

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2021年シーズンに練習量を減らしたワケ

大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80

『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80 』(三笠書房)

休んでる? 自分をいたわってる? 夢に向かっている感覚は、頭の中に置きながらも! 練習って、やりすぎることによってフィジカル的に崩れてきたりすることもあるんですよね。感覚的にやりすぎて崩れることはけっこうあったので、そういう意味で練習量を減らしてみましたけど、これも一つのチャレンジかなと思っています》(2021年シーズンに練習量をかなり減らしたことに触れた言葉)

 大谷はアスリートとして、自分に妥協を許さない。人の何倍もの結果を求めるし、そのために努力も惜しまない。しかし一方で無理をすることもない。この言葉のように、あえて練習量を減らすことも実行しているのだ。

 必要な努力を制限し、体や心を休ませるのも、目標達成には欠かせない行動だ。気持ちが折れたり、病気やケガで入院したりしてしまうことがあれば、どんな夢だって実現しなくなる。その意味で、やみくもに全力投球し続けるのは間違っている。

 とはいえ、休み続けてしまえば、また自分を動かすのも難しくなる。とかく人は誘惑に弱い動物なのだ。では、休むことと努力することのバランスは、どこで決まるのだろう? それは結局、しっかり自分の目標が定まっているかどうかだ。叶えたい目標を認識していれば、「今、自分のやるべきこと」として、体と心を休めて気分転換することが自然と選択肢にあがってくる。大谷の中では、休むことも夢を叶える道の一つなのである。

結果目標を認識したら行動目標に照準を合わせよう

ホームランを狙おうというのはほとんどないですね。そういう打席はほとんどシーズン中にもないので。いいコンタクトをしたら、勝手に本塁打になると自分では思っているので、詰まっても、先っぽに当たっても、ある程度いい角度で上がれば、本塁打になるという自信を持って振っているので。特に狙うということはなく、いい角度でボールに当てるというのが一番かなと思います》(ホームランを打つことに対するこだわりについて語った言葉)

「欲」がバッティングに悪影響を与えることを、大谷は熟知している。一般的に「目標」というものは、「結果目標」と「行動目標」の二つに分類できる。そのうち「ホームランを打つ!」というのは結果目標であり、これをしっかりと頭の中に叩き込んでおかなければ、結果は出せない。

 しかし、いくら「ホームランを打ちたい!」と強く願っても、「いい角度でボールを当てる」という行動目標が実践されていないと、やはり目標は達成できない。大谷の意識には、この両方の目標がしっかり絞り込まれているのだ。

 1902年に英国の作家ジェームズ・アレンは、有名な『「原因」と「結果」の法則』(坂本貢一訳〈サンマーク出版〉)という本で、「いい結果の背後には、必ずよい想いや努力が存在しており、そこに一切の偶然性が介在する余地はない」ということを述べた。

 この「いい想いや努力」こそ行動目標で示されるものであり、結果目標ばかりイメージしていても、思うような結果を出せるはずがない。この心構えはきっと、あなたが新しい扉を開く鍵となるだろう。結果目標をいったん認識したら、あとは行動目標に照準を合わせよう。

<TEXT/児玉光雄>

兵庫県出身。追手門学院大学特別顧問。京都大学工学部卒業。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)大学院にて工学修士号を取得。米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として米国オリンピック選手のデータ分析に従事。臨床スポーツ心理学者として多くのプロスポーツ選手のメンタルカウンセラーを務める

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大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80

大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80

大谷翔平の強さ、成長力、愛されキャラの秘密とは? 大谷の発した80の言葉から、彼の思考・行動パターンを解き明かし、「なぜ大谷は一流のメジャーリーガーに上り詰めることができたのか」について深く考察する

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