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コロナで来客率90%減も。塚田農場に聞く「新たな事業」と「社員の救済策」

ビジネス

平時の取り組みが非常時に問われる

野本周作氏

 今、飲食業界全体が苦しい状況下に置かれている。しかしだからこそ、見えてきたこともあると野本氏。大きく売り上げを落としている店舗がある一方で、落ち幅の小さい店舗もあるという。

平時にどれだけ頑張ってきたかが問われるのだと思います。お客様においしいものを食べていただき、楽しい時間を過ごして満足していただく。そのために何をしてきたかが、非常時での明暗に影響を及ぼすのではないでしょうか」

 満足してくれたお客さんは、そのお店のファンになってくれる。そして「困っているみたいだから食べに行こう」「いつもより多めに注文しよう」と思ってくれる。そんなファンを平時のうちからどれだけ大切にできているかが重要なのだと、野本氏はあらためて気づかされたのだそうだ。

 また、店舗が客との最も重要なインターフェースだと考えていたが、このコロナ禍でそれだけではないことにも気付いたという。

「SNSでの当社への評価に大きな変化がありました。以前は改善点を見つけるためにSNSをパトロールしていたのですが、コロナ禍以降、ネガティブなコメントがめっきり減り、あたたかいコメントばかりが目立つようになりました

「愛されている」と実感できたことが一番の収穫

 通販事業を始めたときに、SNSでは「塚田農場の地鶏の炭火焼が買えるぞ!」「おうちで塚田農場の料理が楽しめるなんて!」などの声が多数見られ、野本氏は応援されていることを実感したそうだ。店頭のインターフェースが機能しない状況での新鮮な発見だったという。

「来店客数が減少すると、自分たちが嫌われたのかと思ってしまいますが、そうではなく、忘れられているだけだったのだと気が付きました。何かのきっかけで思い出していただき“久しぶりに行ってみよう”“行ったことないけど今度行ってみよう”と思っていただければ、これに越したことはありません」

 まだまだ出口の見えない厳しい状況が続くが、SNSという客との新たなインターフェースを得られたこと、愛されていると実感できたことが、この1年でのひとつの大きな収穫でもあったという。

「これまで積み重ねてきた努力が生きていると感じました」と野本氏は話す。また国や自治体が、飲食業界を何とか守ろうとしていることについては「いろいろな意見はあるが、他の業界に比べると恵まれており大変ありがたいこと」だと感じている野本氏。早く終息させるためにも、できる限りの協力をしていきたいという。

<取材・文/からあげライター 松本壮平>

【野本周作】
株式会社エー・ピーホールディングス 取締役 執行役員 COO。新卒で松下電工株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社し、経営企画にて調査・戦略担当として10年務めた後に、株式会社ローランド・ベルガーへ。その後、複数のサービス・外食企業を経て、2018年、株式会社エー・ピーカンパニー(当時)の執行役員に就任。2020年に取締役に就任し、国内外事業全般と生産流通部門およびマーケティング部門の統括を担当している

ライター&編集者。日本唐揚協会認定カラアゲニスト。「からあげの聖地」である大分県中津市出身。年間の唐揚げ喫食量は300食を超える。専門店だけでなく、居酒屋、食堂、スーパーなどで唐揚げを見つけては食べてみる「から活(からあげ探索活動)」を継続中
Twitter:@dogesho

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