“ヨーロッパ最後の独裁者”に10万人が抗議デモ。世界各国で同様の動きが
レバノン首都でも反政府デモが
8月4日に首都ベイルートで大爆発が起きたレバノンでは、同月6日に反政府デモが始まり、同日だけで5000人から1万人の若者たちが通りに出て抗議活動を行い、一部は警官隊と衝突し、700人あまりが負傷したとされる。
レバノンでは昨年10月、政府がスマートフォンのSNSアプリ使用に対する課税を発表し、国内で若者を中心とした数万人規模の抗議デモに発展。抗議デモはベイルートを中心に全土に一気に拡大し、政府は同課税撤廃を含む改革案を発表したが、同月下旬、当時のサード・ハリリ首相が辞任を発表。今年1月にも、デモ隊と治安当局の間で大規模な衝突が発生し、450人以上が負傷した。
多くの若者たちの不満は、こうした長年にわたる政府の失策や汚職にあったようだが、今回の大爆発がきっかけとなって一気に表面化したようだ。
韓国・文在寅大統領は支持率30%台に
韓国では、本来は日本からの解放を記念する光復節の日にあたる8月15日、ソウルの中心部では文在寅大統領の退陣を求める5万人規模の反政府デモが行われた。
市民らは新型コロナウイルスの感染拡大による雇用悪化や不動産価格の高騰などに強い不満を抱いており、特に若者の不満は高まっている。文在寅大統領の支持率は良い時は70~80%で推移していたが、現在は30%台後半にまで下落している。
韓国は日本以上の学歴社会とも言われ、大学入試でいわゆるスカイ“SKY”(ソウル大学、高麗大学、延世大学)に入れるかどうかはその後の人生を大きく左右するとも言われ、一度脱線した若者たちが抱える社会経済的な不満も大きくなっているという。
各国によって事情は違うが、「政府の既得権益VS市民たちの抗議」という構図は共通している。そして、インターネットやSNSの普及や発達は、政府など既得権益層からすると大きな脅威となっている。2010年のアラブの春ではインターネットやSNSが市民の連帯を生み、大規模な反政府デモに発展し、各国で独裁政権が崩壊した。今後も市民のネットワーク化によって、独裁政権が崩壊する事例は出てくるかもしれない。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>