bizSPA!フレッシュ

不動産業界を捨てて「やりがい」を求めた29歳。年収半減でも幸福な理由

学び

 ところが池上さんは、そこでまたもや「やりがいのある仕事」を追求します。

「弁護士になりたかった理由は、苦労して育ててくれたオヤジの後ろ姿を見て育ったから。決して目立たないけど、一生懸命に生きている人たちに寄り添うような仕事をしたい。そこで法テラスの弁護士を希望しました」

 法テラスというのは、法的なトラブルに遭遇したときに、法律の専門家に依頼したいにも関わらず、経済的に余裕がない人を支援する制度。困っている人が無料で法律相談を受けたり、弁護士費用などを分割で支払えるような仕組みがあります。

年収はダウンも、やりがいは反比例?

オフィス街

 法テラスに就職した池上さん。年収は不動産会社の頃に比べて、大幅ダウン。

「世間でいう弱者に寄り添った活動をするため、法テラスの弁護士の年収は一般の法律事務所に勤務する弁護士よりも低いとされています。私も年収が不動産勤務の頃に比べて、半分程度になりました

 一方、やりがいは年収に反比例して上昇しているそうです。

「ブラック企業や不当解雇などの労働問題をはじめ、年金を娘や息子にネコババされた親やDVの被害にあえぐ妻、離婚で親権を奪われた母親など、家族の問題が多いですね。

 社会の問題が凝縮されて僕の目の前に置かれている。苦しんでいる人を見過ごせないという気持ちが深まっていきます

交際中の恋人は「結婚後も、働き続けたい」

夫婦

 最近は、夫の愛人に夫と子供を奪われて離婚された元専業主婦が、子供の親権を取り戻したいと相談。そこで復職して子育てできるほど稼けるようにアドバイスし、年収がアップした母親に親権を取り戻させた案件が一番嬉しかったとか。

「父親はもちろん、不動産会社に誘ってくれた先輩も喜んでくれました」。現在交際中の恋人は「結婚後も、働き続けたい」と、共働きを決めているそうです。

「回り道をしましたが、学歴で就職した最初の会社があるからこそ、今があります」と池上さんは前向きに受け止めています。

<TEXT/夏目かをる イラスト/三澤祐子>

コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。『週刊朝日』『日刊ゲンダイ』「DANRO」「現代ビジネス」などで執筆。
Twitter:@7moonr

12

おすすめ記事