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住友林業、“木造”70階建てビルを計画。実現できるのか聞いてみた

ビジネス

木造高層ビル、実現には1000以上の課題も

住友林業_インタビュー2

――木で350mの建物を建てるというのは途方もない計画のように思えますが、現状の課題や取り組みをお伺いしたいです。

中嶋:住友林業では、W350計画で克服すべき課題をあらかじめ設定しております。課題の数は大きなものだと108個、小さなものだと1000を越えます。

 まず1つには耐震性です。すでにノルウェーでは85m・18階建ての木造ビルが完成しておりますが、地震大国である日本ではより耐震性が求められます。ゲノム選抜による苗の選定や遺伝子レベルの解析によって、より強い苗木を見つけ増殖し強固な木材を創出する研究を行っています。

 また、高層ビルの建設には現段階では総工費試算で6000億円を見込んでおり、事業としてはコスト面で課題があるのは確かです。ただしこの費用の中には技術開発費や、いまだ存在しない材料開発なども含まれております。

 今回の計画はあくまで事業化計画ではなく、350mの木造ビルを建てられる技術を確立させることが大きな目的であると考えております。

火災に強い木造建築に必要なのは

W350_バルコニー

ビル外周部に設けられるバルコニー(イメージ図/提供:住友林業)

――最近では首里城の火事などもあり、人々の中で木造建造物に対する不安は大きいと考えています。こちらに対してはどのようにお考えでしょうか。

中嶋:みなさんご存知のとおり確かに木は燃えます。それは他の素材も同様なのですが、特に古い木造建築物の火災などで、木造=燃えやすいという印象がついてしまっているようです。もちろん木は燃えやすい素材ではありますが、実は、建物の素材よりも“どのような構造にするか”のほうが大切です。

 15階を超える建物では3時間、火にさらされても耐えられることが必要条件となっていますが、住友林業では木が燃えるメカニズムを研究することによって火のまわりを遅らせる研究を行っております。

 また、火事の際に最も大きな死因となるのが煙です。煙を避けながらいかにスムーズに避難できるかが大切であるため、建物の外周部に上り下り可能なバルコニーや建物の中心に排煙しやすい吹き抜けを作ることによって安全性を確保できる設計を行っています。

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