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上司が泣きながら社員に土下座「私の新卒ブラック企業体験記」

学び

 晴れてA印刷からの内定を獲得したサキさんは、翌春無事正社員としての入社を果たします。同期は男性2名。勤務先は都内にある本社で、日当たりの悪い路地に建つ、だいぶ年季の入った4階建ての自社ビルでした。

体育会部活から毎年、露骨なコネ採用

 社内の会議室でおこなわれた入社式のあと、緊張も少し解けたサキさんは、雑談がてら同期に「ほか何社くらい受けましたか?」と尋ねました。

 すると彼らの回答は予想外にも「いや、ここだけっす」。なんと同じ大学の同じ運動部仲間で、就活自体などしなかったと言うのです。

バスケットボール

 入社のきっかけは「ここで働いてる部活の先輩から誘われたから」。なんでも、その運動部とこの会社の営業部は昔から密接な繋がりがあるのだそう。

 その割には、20~30代の若い社員が少なく、ほとんどが40代以上でした。サキさんは当時を振り返ります。

「とりあえず体育会系のコネ入社で毎年、社員を確保するんですけど、結局やめていっちゃうんですよね」

 翌日からは早速営業部での新人研修が組まれていました。営業部は、毎朝始業10分前から朝礼があるとのこと。「思えばあの朝礼の時点で、なんかえらい会社に来ちゃったな、と思いましたね」

本部長がすべてを仕切る過酷な朝礼

 朝8時50分。本部長が立ち上がると、すぐに社員全員が作業を止めて立ち上がり、朝礼が始まります。本部長が隣に立つ副部長にアゴで指示を出すと、副部長は営業部全体の数字が芳しくないことについて話し出します。

 途中で噛んだり、つっかえたりすると、本部長がわざとらしく大きなため息をつくのです。

「副部長は報告のための資料を左手で持っていて、右手はジャケットのなかなんです。不自然だと思って見ていると、どうやら左胸を抑えているようで。朝礼のときはいつもこう。険しい表情でした」

 特に数字の悪かったチームリーダーを名指しする本部長。

「今月の目標と予算は? ちゃんと意識してんの?」

 これにリーダーが答えると、「前々月の目標と予算言えるか」「じゃあ去年の×月は?」と、リーダーが答えられなくなるまで質問が続きます。そのあいだ、皆立ったままじっとしているのです。

「2年前までの目標数字と予算をメモした紙を、各リーダーは用意して朝礼に参加していましたね。聞かれたら、それをこっそり見るために。答えられないと猛烈に叱責されますから。でも答えすぎると、本部長がムキになってくるので、難しいところです」

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