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元ヤン社長が、ディズニーランドで学んだ「5つの教え」

学び

教え②「嫌われ者はいらないけど……」

――香取さんはディズニーで働いて4年目に、持ち場の責任者を任されるようになったそうですが、人をまとめる立場になってみて気づいたことはありますか?

香取:チームをより良いものにするための注意は必要だってこと。僕が責任者になったのは、夜のパレードの準備や後片付けを行なうセクションでした。当初は嫌われるのが怖くて、チームのメンバーに注意ができませんでした。自分が大事だったんです。

 身だしなみの違反を見逃しただけだったのに、チーム内がどんどん乱れ、業務上のミスまで増えてしまいました。そんなときに元上司に言われたのが「嫌われ者はいらないけど、嫌われ役は必要なんだ」という言葉。「嫌われ者は自分の感情だけで動くけど、嫌われ役はチームのみんなが言いづらいことを代弁する役割なんだ」って。

 仕事は仲良しクラブじゃない。自分の保身ではなく、“このチームで最高の力を出すこと”をもっとも重視すべきなんです。

教え③「想いやりが、より良いサービスを生み出す」

香取貴信

――香取さんの著書だけでなく、ディズニーのサービスを題材にした本が多数出版されていますね。

香取:ディズニーで働くまでは、仕事は自分の時間を切り売りしているもの、と思っていました。正直、当初は“お客様”という考え方自体、ピンとこなかったです。

 そんな僕に、上司は「目の前のゲストがどこからディズニーランドに来て、どんな思いで並んでいるかを考えてみろ」と教えてくれました。ゲストの中には何時間も運転して来る人もいれば、一生に一度しか来られない人だっている。

 だから、めいっぱい楽しんで素敵な思い出を残してもらいたい。仕事への姿勢を本気で考え、目の前のお客様を本当に大事にするようになったのは、それからでした。

――そこで初めて“お客様”を意識できたのですね。

香取:若い頃って、自分の仕事が社会にどう繋がっているかって見えづらいから、“自分の仕事って意味がない”なんて思っちゃうかもしれない。でも、どんな業種でも、お客様は絶対にどこかにいるんです。たとえ遠い存在だったとしても、相手のことを思いやって働くことができれば、仕事は単なる作業ではなくなると思う。それが、仕事の価値を上げることじゃないかな。

 ただ一方で、昨年、オリエンタルランドに対する過重労働とパワハラの訴訟が起きてしまったのも事実。創業35周年が過ぎ、生粋のディズニースピリッツを持つオープンスタッフが定年を迎える中で、ディズニーの教えが伝達されない部署があったのかもしれません。

 でも本来、“ゲストも同僚も大切にする”ことがディズニーの教えの根底にあることは皆さんに知っていただきたいです。

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