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メルカリで本を売る人が知らない「価値」とは?ベストセラー著者に聞く

コラム

 全国大学生活協同組合連合会が発表した「第54回学生生活実態調査の概要報告」によると、48.0%の学生が「読書習慣なし」と回答。若者の読書習慣が二極化している状況が伺えます。

机の上で仕事・勉強をする男性

※画像はイメージです

 先日、『本をどう読むか: 幸せになる読書術』(ポプラ社)を上梓した、『嫌われる勇気』の著者で、アドラー心理学の第一人者としても知られる岸見一郎氏に「読書」をテーマにお話をうかがいしました。

20代が有益な読書体験をするには

――「若者の読書離れが進んでいる」と言われています。今の20代が有益な読書体験をするには何が必要なんでしょうか?

岸見一郎(以下、岸見):「読書が有益であるべき」という考え方から抜け出すのが第一歩ですね。あまりそこに囚われすぎると逆に読書から離れていくのではないかと。本を読むこと自体がつまらなくなっていくのです。

 何も目的がなくて本を読む、その瞬間が楽しい。こういう経験ができたら読書に向き合う姿勢も変わってくる。残念ながらそういう経験がないのかなという印象です。

――可処分時間が限られている人だと、目的を持ってたとえば「仕事に役立つ本」を優先する実態もあるのでは。

岸見:別に役にたたない本でもいいと思います。とにかく面白い本と出合うことが先決。思いがけず時間の歩みを忘れてしまう読書体験をすると、その後の本との向き合い方が違ってくると思います。

 多くの人が学校教育で教科書だったり参考書だったり、社会人になってからは資格のテキストだったりを強制的に読まされてるわけでしょう? そのような教科書や強制的に読まされる本を読むことと、役に立たないかもしれないけれど面白い本を読むことは違うということをまずは知ってほしい。

――読書ではなく、スマホのコンテンツに可処分時間が取られている指摘もあります。

岸見:そこは折衷案ではないですけど、たとえばKindleアプリを入れればスマホでも本が読めますよね。

読書にアウトプットは必要か?

岸見氏

自身の読書観を綴った『本をどう読むか: 幸せになる読書術』を、ポプラ社から出版した岸見氏

――たしかにひとつの方法です。岸見先生ご自身は電子書籍はよく読まれるのですか?

岸見:今は紙の本よりも電子書籍のほうが多いです。8:2で電子書籍を読んでます。気になる本があればまず「Kindle版あるかな」とチェックしますね。

――意外な印象です。

岸見:今すぐ読みたい、書店に行くのももどかしい時に電子書籍は便利です。あとは現実的な問題として、本を置くスペースの問題があります。アプリで電子書籍を読む体験は僕らの世代より若い人のほうがハードルが低いはずです。

――「本を読んだらアウトプットすべし」という考え方があります。これについてはいかがですか?

岸見:別にアウトプットしようと思わないほうがいい。人生で読書のアウトプットとして最初に体験するのは読書感想文でしょう? あれが本当に苦しい。本を読むことは面白いけれど、「読書感想文を書け」と言われると本も読みたくなくなってしまう。

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