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引きこもりだった僕が親の会社を継いだ理由。父と真逆の経営方針

ビジネス

「仕事とは?」「社会とは?」父の背中を見て学ぶ

 お父さんの会社で社会人デビューを果たした林田さんですが、家庭で見るときとは少し違った仕事人としての父の姿を知ることになります。

「父は義理人情に厚く頑固、昔気質の人間。約束や時間の厳守、できない約束をしない、信用信頼が重要だということなど、昔から言われてきたことですけど、一緒に仕事をすることで、より強く実感したところです。また、父は自分の仕事にも厳しい人で、期日以内に納品できたとしても『本当にこれでよかったのか』って、自問自答して思い悩むような場面も何度か見てきました」

 仕事を手伝い始めた当初、事務仕事がメインでしたが、徐々に自社製品の開発業務、経営戦略の立案と実行、財務管理など経営の中核を担うことになります。やがて社長となって、初めて直面した大変さもあったとか。

「自分で決めたことで会社のすべてが動くということです。自分の決裁で会社を動かしていくという感覚に早く慣れたいとは思いますよね。『決める』とは責任を持つということなので、成功と失敗、両方を想定して行動することにしています。だんだん失敗したときの想定がリアルになってきて、物事を素直に捉えづらくなるのが悩ましいところです」

 お父さんの会社を除けば、実質、社会人経験ゼロのまま経営者となり、従業員を取りまとめる立場となった林田さん。仕事上のコミュニケーションに関して、どのようなことを心がけているのでしょうか。

父親とは真反対な姿勢で社会と向き合う

電卓

「父はデザインも経営も自分の考えひとつで突き進んでいく人でした。怒鳴り散らすのは当たり前。従業員の不安不満、ストレスはもっぱら飲みの席で解消するという。でも正直言ってそういうやり方が僕は好きじゃない。

 自他共に厳しい父は、ワンマンな経営方針をとってきました。けれど僕は自分に甘いと思っているし、だからこそ他人に厳しくする筋合いはないと思うんですよね。従業員には、些細なことでも相談してほしい。逆に自分からも相談したいと伝えています。周りと歩調を合わせていくのが僕の経営の仕方です」

 会社を継ぐということは、親の責任も引き継ぐことになり、先代と比べられることが多いそうです。

「社内に関していえば、僕が社長になることに反発はほぼありませんでした。でも取引先だとか対外的なところだと、世襲だし、若い。見た目が童顔というともあっていきなりタメ口を聞かれたり、正直舐められてると思うこともあります。

 ただ、そこに関しては、仕事付き合いを通して『意外としっかりしてるな』って思われたり、プラスに働く部分でもあります。世襲、若い、童顔みたいな属性はおおいに利用したいところです」

 傍からみれば「世襲社長」という声が聞こえてきそうな林田さんの境遇ですが、柔軟な経営方針は父親を反面教師としているようです。

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