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出生数70万人割れと日本の課題【やさしいニュースワード解説】

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出生数70万人割れと日本の課題【やさしいニュースワード解説】

在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「出生数70万人割れと日本の課題」です。

出生数68万6,061人、2070年には半数になる可能性も

日本で生まれる子どもの数が年々少なくなっています。厚生労働省が6月初旬に発表した2024年の人口動態統計(概数)によりますと、2024年に生まれた子どもの数は68万6,061人と、統計を取り始めて初めて70万人を下回りました。前年と比べ4万1,227人減少しました。

同時に一人の女性が生涯に生む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.15となり、こちらも過去最低になりました。政府の想定を上回って少子化が進んでいることを示しており、このまま推移すると45年後の2070年には、生まれる子どもの数は今の半分になる可能性もあります。

少子化がもたらす社会問題

少子化が進行すると、国の活力が低下し、多くの社会問題が顕在化することになります。労働力人口が減ると国内の市場は縮小し、消費が減少して企業収益が先細りになるなど経済にマイナスの影響が出てきます。

これに伴って国の税収も減少し、必要な公共サービスの質が低下することなどを招きかねません。投資先としての日本の魅力が低下してしまうと、海外からの投資は減り、資金が引き揚げられてしまう可能性もあります。この結果、イノベーションが起きにくくなり、魅力ある製品やサービスが生み出されなくなる悪循環に陥ります。

インフラや民間サービスへの影響

社会の制度や基盤を維持することにも影響が出てきます。人々の老後の暮らしなどを支える年金の額が減少しかねないほか、インフラを維持するための資金を十分手当することができなくなります。たとえば自治体のゴミ回収の頻度が少なくなったり、公共施設を維持するために利用料金が上がったりするなどのケースが起こりうるでしょう。

民間のサービスにも影響が出る可能性があります。小売業や飲食サービスなどの需要が減少して企業の倒産が増えたり、宅配ドライバーの減少で十分に荷物が運べなくなったりする事態なども考えられます。こうしたことは、現在多くの人が当たり前のように享受しているサービスが、将来は十分行き渡らなくなる可能性があることを意味します。

人口減に歯止めがかからない政府の対策

今後の日本が直面する問題は、生産年齢人口が減る中で、限られた現役世代がより多くの高齢者を支えていく方向に向かうことです。将来世代の負担を大きくしないためにも、少子化を食い止め、人口が増加する方向に転換したいところですが、これまで長年にわたり政府が対策を講じてきても人口減に歯止めがかかっていないのが現状です。

若い世代が安心して子育てできるような経済的支援などに取り組みつつ、各世代で人口減を「自分事」として受け止め、真剣に考えることが必要になってくるといえるでしょう。

在京の大手メディアで取材記者歴30年。海外駐在も経験。

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