激安TemuとSHEINが値上げ!?中国発ECサイトを苦境に追い込む「デミニミス・ルール」とは?

前回の記事では、中国発の激安ECサイト、TemuとSHEINが急成長を遂げた背景について解説しました。その一因にアメリカ市場における「デミニミス・ルール」の存在がありましたが、2025年にドナルド・トランプ氏が大統領に就任したことで、この規定が大きく見直されることになります。この記事ではデミニミス・ルールと規制強化に伴う中国発低価格ECサイトへの影響について解説します。
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トランプ大統領がデミニミス・ルール適用停止の大統領令に署名
近年、中国発の激安ECサイトが世界中で人気を集めています。これらのサイトは、低価格な商品をオンラインで販売することで、多くの消費者を魅了してきました。しかし、2025年2月1日、トランプ大統領は中国からの輸入品に対するデミニミス・ルールの適用を停止する大統領令を発令しました。
デミニミス・ルールとは、輸入貨物の申告価格が一定額以下の場合、関税が免除される制度です。米国では、800ドル以下の輸入品に適用されています。この規定は、少額輸入品に関税をかけるコストが税収を上回るという理由から、多くの国で導入されています。
トランプ大統領は、中国企業による関税回避や違法薬物密輸への懸念から、この規定の適用停止を決定しました。
特に、デミニミス・ルールの抜け穴を利用して流入する合成麻薬・フェンタニルはバイデン政権時代から米国で問題視されており、トランプ氏もフェンタニル撲滅を公約に掲げていたのです。
しかし、税関当局のシステム準備が整っていないことを理由に、2月7日に一時的に停止措置が留保されました。
低価格が売りの中国発ECはどう出る?
デミニミス・ルールの廃止は、中国発激安ECサイトに大きな影響を与えると予想されます。
これまで関税が免除されていたため低価格で販売できていた商品が、関税により値上がりする可能性があるのです。また、価格上昇に加え、通関手続きの煩雑化による輸入コスト増加も販売量に影響を与えると考えられます。
今後、激安ECサイトでは、製品の価格を抑えるべく、さまざまな対応に迫られることでしょう。例えば、米国以外の国に生産拠点を移す、あるいは米国に倉庫を設けるなど、物流ルートの変更を余儀なくされるかもしれません。現に、SHEINは配送時間を短縮するため、北米と欧州で倉庫の建設を進めています。
世界的に見ると、デミニミス・ルールは調整または廃止される傾向にあるのが現状です。南アフリカでは、デミニミス・ルールを廃止し、低価格輸入品でも関税を課しています。
一方、デミニミス・ルールの廃止は税関の業務量増加や納税者へのコスト増を招き、期待される税収増加にはつながらないと指摘する専門家の声もあります。
デミニミス・ルールの廃止が、中国発激安ECサイトにとって大きな試練となるのは確実です。 今後、どのような戦略でこの変化に対応していくのか、注目が集まります。
[参考]
トランプ関税、小口輸入も対象 TemuやSHEIN標的 – 日本経済新聞
米税関、少額輸入貨物の簡易通関制度を厳格化する規則案を発表、パブコメ募集(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ
トランプ米大統領、中国からの輸入にデミニミスルール適用停止留保の大統領令発表(中国、米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ