今からでも遅くない!食事で広げる新しい世界と人とのつながり

ライフワークとしてブックレビューを長年執筆する経済ジャーナリストが、話題の本を紹介。今回は、 毎月平均5〜10回の食事会を開催する「スーパーコネクター」古河久人氏の著書『「最高のビジネス人脈」が作れる食事の戦略』 (東洋経済新報社)です。
一緒に食事をした人の数は25年間で累計2万人
人間関係を深めるにはいろいろな方法があるが、気が合いそうな人や話を聞きたい人と一緒に食事をすることがその一つの方法であるのは、多くの人が感じていることだろう。
本書は食事を通じて人脈や交友関係を広げていく方法を指南する本である。食事は一定の時間を共に過ごし、楽しく関係を深められる効用が高い。著者は生命保険会社出身で、40代から食事を通じて人と人をつなぐ「人脈活動」を始め、各方面に広げている。
「スーパーコネクター」とも呼ばれる著者が本書で実績を記しているが、その内容には驚かされる。年間800人近くの人に会い、一緒に食事をした人の数は25年間で累計2万人に及ぶ。
著者自身、若い頃は内向的で人脈づくりも苦手だったというが、好きなワインの会を開催することから始めて人脈を広げていったという。
人脈を広げるカギは店選び
本書では自らの経験を踏まえ、誰でも無理なく人脈を広げる5つのステップを紹介する。まずは「出会いの機会」を広げつつ準備を整える。次に「名刺」や「自己紹介」で自分を上手にアピールする。第三に一歩踏み出して「個人的な関係」をつくる。第四に「幹事」を引き受ける、そして最終的に「自分の会」を主催するという段階を示す。
人脈づくりは何歳からスタートしても決して遅くないというのが著者の考え方であり、こつこつ積み重ねたものがやがて大きな実りになると指摘する。
そこで重要になるのが食事であり、店選びがカギを握る。食事がおいしいことはもちろん、店の雰囲気やお酒、店の方のもてなし方などを含めて総合的にいい店を選ぶことが重要だという。
店の使い分けと行きつけの重要性
さらに和洋中の店は目的別に使い分けることや、会を開く時は飲み放題が便利なこと、和食店などでは店主(大将)を味方につけると会話に途切れた時に助けになってくれることなども記す。
加えて行きつけの店をつくっておくことの重要性も説く。自分のなじんだ環境が確保できるとともに、行きつけの店には自分との関わりにおいて思い出やエピソードがあるからだという。
著者は食通の知り合いなどに紹介してもらうなどして、店に何度か足を運んで行きつけをつくることをすすめる。和食2店、フレンチ1店、イタリアン1店、中華2店、その他自分の好きな、とっておきの店1店の7店を目標にすると店のリストは充実すると助言する。
このほか、ランチは1対1で交流を深めたい場合や仕事の情報交換、人を紹介する機会として活用でき、短時間ですむので相手もつきあってくれることが多いという。
人脈は将来の大きな財産
ステップ4の幹事を務めたり、ステップ5の自分の会を主催したりする段階になると次第に応用編となっていくが、本書ではいずれも有用なアドバイスが紹介される。
著者の域に達するまでには相当の時間がかかるが、本書を参考に初めの一歩を踏み出してみると世界が変わる予感がする。特にビジネスパーソンが若いうちから知り合いを増やす工夫をすることは、将来の大きな財産になるだろう。自分の世界を広げたい人に読んでほしい一冊である。
『「最高のビジネス人脈」が作れる食事の戦略』古河久人著 東洋経済新報社 1,760円(税込)