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<第8回>穴を見るまえに飛べ!「命がけの跳躍」をするかどうか、それが問題だ――『貨幣論』と『トイ・ストーリー』を混ぜてみた

コラム

「命がけの跳躍」をするかどうか、それが問題だ

「それ」は「人間」と名乗りました。商品たちとはまったく違う存在でした。

貨幣論・人間 人間「さぁ、『穴』に飛び込むのです。『跳躍』するのです」

貨幣論・リンネル リンネル「ちょっと待って、その先には何があるの?」

貨幣論・人間 人間「『市場』があります」

貨幣論・リンネル リンネル「市場……!?」

貨幣論・人間 人間「『命がけの跳躍』で飛び込んだものだけに『価格』がついて『市場』に流通するのです」

貨幣論・上着 上着「いったい何のことを言っているんだ……?」

貨幣論・コーヒー コーヒー「さっぱりわからない……」

 急にいろんなことを言われて、リンネルは混乱しました。しかし、うしろを見ると紙幣によって世界は崩壊しようとしています。飛び込むかどうかの覚悟をしなければいけないようでした。

貨幣論・リンネル リンネル「いったいどうする……!?」

 決断を迫られていました。

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見るまえに跳ばなくてはならない。商品を売るとは、それゆえ、マルクスにならって茶化していえば、商品に「Salto mortale(とんぼ返り)」(一二〇)、直訳すれば「命がけの跳躍」を強いることなのである。「この跳躍に失敗すれば、商品にとっては痛くないが、商品所有者にとってはたしかに痛い」(一二〇)。値札に書きこまれた価格が高すぎれば商品は売れ残ってしまい、低すぎれば品切れになってしまう。(岩井克人『貨幣論』ちくま学芸文庫、一五九頁)
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【次回予告】
 商品世界を脱出するため、リンネルは「穴」に飛び込む。そして、そこで見たものは、人間たちが自分たち「商品」を買う世界だった。貨幣と商品、そして価格の関係をリンネルは目の当たりする──!

<TEXT/菊池良 イラスト/タナカカツキ>

1987年生まれ。ライター。2017年に出した書籍『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)が累計17万部。そのほかの著書に『世界一即戦力な男』がある

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