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【なぜコロナ禍に新千歳ー那覇?】日本一のトンデモ長距離路線を飛ばすピーチアビエーションの戦略とは

コラム

コロナ禍が始まった2020年にもピーチアビエーションは積極的な路線展開を進めていました。LCCの特徴の一つの短距離高頻度輸送が格安モデルになるところ「LCCの常識外れ」と言える1機往復で一日7時間を拘束してしまう日本一の長距離路線の新千歳—那覇間の新規開設が象徴的です。

ピーチアビエーションの機体

ピーチアビエーションの機体

ピーチアビエーション広報室課長代理の長谷川遥さんにこの路線の開設理由を聞きますと、「2つの異なる風土や文化の違いを結ぼうと考えました。シーズンの夏期だけでなく、冬季でも避寒やスキー需要があって年間を通しての利用者がいらっしゃることも大きいです。この路線は当社が独自に路線分析を行い、需要があると見込んで開設したものです」と聞かせてくれました。

新規路線を作る余裕はないはず…

コロナ禍で軒並み乗客が減少し、特に2020年度の決算は航空会社にとって目を覆いたくなるような大赤字が並びました。旅客数は2019年度の728万人に比べて実にマイナス71%にもなります。ピーチには常識外れのような新規路線を飛ばしている余裕はないはずです。

ピーチアビエーション経営企画部部長(2022年取材時)の福島志幸さんは、こう答えてくれました。

当初はコロナ禍の収束が早いと予測してインバウンドの利用を想定して新規就航を決めました。このように長期になるのは予想外だったのです。余裕はないけれど、路線縮小に向かう判断をするのは経営上も否定的です。なぜなら需要は必ず戻ると考えているからです。路線を供給すれば需要が生まれます。われわれは格安運賃だから乗ってくれる需要層を掴んでいます。もともと乗り継ぎでも利用されていた顧客層が一定数おり、格安の直行便を用意したことでの利用者を想定していました」

北海道の人たちの旅行感覚

実際に新千歳空港の那覇行きの搭乗待合室で乗客から話を聞くと、福島さんの見解が決して的外れではないことがわかります。

沖縄在住の60歳代男性は、北海道の実家で入退院を繰り返す父親の面倒を見に年に3回は利用すると言う旅程の帰路でした。容体の急変による出発直前の手配が多く、ANAの運賃に比べて数分の1となるピーチの利用は必須だと言います。

北海道在住の30歳代女性は、沖縄にいる交際相手に会いに行くと言います。毎月交替で行き来しており、「国内最大の遠距離恋愛を実践しています」と笑顔で話をしてくれました。

70歳代のご夫婦は札幌市に在住し、1カ月に1回のペースで那覇に行き、長期契約した賃貸マンションに滞在する2拠点生活を実践しています。冬場の12月~2月は那覇に長期で住む生活を6年間続けているといいます。

ピーチを使えば、例えば札幌市内から根室に向かうよりも沖縄へ行く方が安くなります。ピーチアビエーションのHPを見て格安になる先々の予約を取るのが楽しみです。私たちのまわりでも知っている人は実践していますよ」と言います。道内の旅先よりも一気に沖縄へ行った方が旅の醍醐味も増すというものです。

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