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いつも怒鳴ってる母は毒親? 27歳の息子が知った、想定外の事情

コラム

職場の先輩の一言で考えさせられた

職場

 それでも、自室にあるものでバリケードを作るなどして抵抗。必要以上の会話をすることなく、吉田さんは就職したのです。吉田さんの過去を知る人のいない職場は快適で、すぐに仲のよい先輩や同僚ができ、充実した日々を過ごします。

「そんなあるとき、家に入れるお金が少ないとかで朝から母とケンカになり、職場の先輩に愚痴っていたら止まらなくなりました。それで昔の話にもなって、いろいろ話していると、先輩に『お母さんは、耳が悪いのでは?』と聞かれたのです

 母親の耳が悪いなんて想像したこともなかった吉田さんが先輩に聞き直すと、「実は、祖父は耳が遠くなりはじめてから顔をしかめたり怒鳴るような口調でしゃべったりするようになった」と教えてくれたのでした。

「母は昔から同じ様子だったと伝えると、『昔から耳が悪かったのではないか』『痛みなどがなければ、病院に行かない人もいる』などとアドバイスしてくれたのです。そう言われてはじめて、母は耳が悪いのかもしれないと考えさせられました」

母の表情や話し方はだいぶ穏やかに

 考えた挙句、吉田さんが病院嫌いの母を引きずるようにして医療機関を受診させたところ、聴力が低いことが発覚。医師と相談して補聴器を付けたことで、母の表情や話し方はだいぶ穏やかに変わり、吉田さんとの距離も少し縮まったと言います。

ずっと母を毒親だと思い込んでいたことを、いまではすごく後悔しています。僕がもっと早く気づいてあげていたら、母の人生はいまより豊かだったのではないかと思うのです。僕のように、親御さんのことを毒親だと勘違いしている人もいるかもしれません」

 吉田さんはそう語り、「自分の親を毒親だと思っている人は、もしかしたら原因が違う場合もあるかもしれないので、冷静によく観察してほしいです」とアドバイスしてくれました。思い込んでしまうと、なかなか真実には辿り着きにくいもの。思い込みでの判断は避けたいものですね。

<TEXT/山内良子 イラスト/本田しずまる(@hondashizumaru)>

-[私が体験した毒親トラブル]-

フリーライター。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意です

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