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SDGsを考える漫画4選。貧困をなくそう、ジェンダー平等実現etc.

暮らし

3:移民が抱える苦労と孤独感

『バクちゃん』
作者名:増村十七
出版社:KADOKAWA

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『バクちゃん』

 主人公は生まれ故郷の「バク星」で「夢」を食べられなくなり、地球に住むおじさんを訪ねてやってきたバクの男の子・バクちゃん。この世界において、バク星と地球は友好条約を結び、観光や労働市場での活発な交流が期待されていました。

 しかし、「バク星の人々は夢を食べる」という情報が一部の地球人に不安を与え、なかには「バク星の人々は危険な民族なのではないか?」と懸念する地球人もいました。バクちゃんは地球での永住権の取得を目指しますが、その工程は一筋縄ではいかず、バクちゃんは銀行口座やケータイを入手することすらなかなかできません。自治体の仕事探しの窓口を訪ねますが、そもそも故郷でも仕事をしたことがないので、何ができるか自分でもよくわかりません。

 バクちゃん以外の移民たちもまた、テロや資源枯渇、環境汚染など、故郷にさまざまな事情を抱えて地球にやってきます。しかし、地球で生まれた人間なら当たり前に受けられる社会保障や、就職の機会なども、移民というだけでハードルが上がります。そしてそうしたハンデキャップ以上に、見知らぬ土地で生きるしか道がないことにどうしようもない寄る辺なさを移民の人々は抱えているということが、作品を通して伝わってきます。

『バクちゃん』という作品の世界の中で「移民」が抱えている苦労や、その孤独感は現実にも既に存在しているのだ、という気持ちで作品を読んでいくと、今までよく見えていなかっただけで多くの問題が自分たちのごく近くにあったことに気づくはず。目標10「人や国の不平等をなくそう」について考えるきっかけになる作品です。

4:誰もがより良く生きられる社会に

『ここは今から倫理です。』
作者名:雨瀬シオリ
出版社:集英社

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『ここは今から倫理です。』

「倫理は学ばなくても将来困ることはほぼ無い学問です。」――本作の主人公は、高校の倫理教師・高柳。彼は初回の授業で倫理のことをこう語ります。倫理は、地理や歴史のように生活で触れることもなければ、数学のような汎用性もなく、英語のような実用性もありません。

 倫理が扱うテーマは、例えば宗教とは何か? よりよい生き方とは? 男女の役割は誰が決めたのか? 幸せとは何か? 命とは――? どうでしょう、知らなくても困らない、しかし知っておいたほうがいい気がしませんか?

『ここは今から倫理です。』には、さまざまな悩みを持った高校生たちが登場します。暴力やいじめなどの問題も出てきます。倫理だけでそれらの問題がまるっと解決するとは限りませんが、どうすれば誰もがより良く生きられる社会になるのか? を考えることで、少しでも状況を良くすることはできます。「誰一人取り残さない」を原則とするSDGsを、テーマから考えるきっかけになる作品です

 また、エコ意識の高まりとともに最近は「エシカル消費」という言葉も聞かれるようになりました。「エシカル」は「倫理的」という意味で、「エシカル消費」とは、日常の買い物の中で、フェアトレードの商品や、エコ素材を使った商品を買うようにするなど、人や社会、環境に配慮した消費行動のことです。

 自分の買い物1つひとつがその先で誰かを悲しませていないか? その商品をつくる過程で、遠くの国で子どもが不当な賃金で働かされていたり、女性が虐げられたりしていないか?(できることなら何も考えずに買い物を楽しめるのが一番ですが、まだ世界にはこうした問題が多いのが現状です)倫理を知っておくことは、こうした多くの社会問題に対する心構えにもつながります。

 以上、「SDGs週間」に持続可能な開発目標を考えるきっかけになる4作品を紹介しました。1人ひとりのちょっとした意識や取り組みが、世の中を大きく変えることにつながるかも?

<TEXT/総合電子書籍ストア「ブックライブ」 西村 葵>

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