ストレスが睡眠トラブルの引き金に…医療現場でも使われる“快眠ストレッチ”
“愛情ホルモン”が生成される「セルフタッチ」
人が人の肌に触れたとき、脳内では“愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されるという。赤ちゃんに触れたり、恋人同士でスキンシップを図ると優しい気持ちになれるのはこのおかげだ。また、オキシトシンは質の高い眠りに欠かせない成分と言われている。
「自分で自分の体に触れる“セルフタッチ”でも、オキシトシンを分泌させることは可能」だと語るのは、健康心理学に詳しい桜美林大学の山口創氏だ。
「人はストレスを抱えると、無意識のうちにオキシトシンを求めて1時間に23回も自分の顔を触っていると言われています。これを意図的に行うことで、効果的にストレス解消、睡眠の質向上を促すことができるのです」
● セルフフェイスタッチ
両手のひらで顔を包み、触れている感覚をしっかりと意識する。目を瞑って行うとよい。
● セルフタッピング
心地よいと感じる程度の強さで10分かけてゆっくりと全身をトントンとタップしていく。
● バタフライ・ハグ
両手を交差して胸に当て、左右の手を交互に動かして胸をさする。これを2分ほど行う。
導眠&目覚めに効果大
わずか1~2分、両手のひらで顔を包み込むだけでも効果が十分に得られるとか。
「夜寝る前に行えばオキシトシンの効果で覚醒水準が下がり、導眠効果に繋がります。逆に、朝起きたときに行えば覚醒水準が上がり、スッキリと目覚められるという効果も立証されています。時間があるときは顔だけでなく、10分ほどかけて頭から足のつま先までゆっくりと体をタッチするとより効果的です。その際のポイントは、一筆書きのように手を離さずに行うこと。バリエーションとして、全身のセルフタッピングも効果的です」
記者も原稿執筆に行き詰まった夜に両手のひらで顔を包み込んでみる。自らの手の温もりがじんわりと頬に伝わり、徐々に体から力が抜けていくのがわかる。こわばっていた頭からもスッと力みが抜けるようだ。
頭が冴えて眠れない夜にはセルフタッピングも実践。タップされた部位から伝わる振動が妙に心地よく、すぐに眠りにつくことができた。他人との接触が制限される今日この頃、セルフタッチを駆使できてこそストレス社会の勝ち組になれる!?
<取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/田中 斉>
【三橋美穂】
快眠セラピスト。1万人以上の眠りの悩みを解決してきた睡眠のスペシャリスト。睡眠の重要性や快眠のための工夫、寝具の選び方などを各種メディアで発信している
【山口創】
桜美林大学教授。「触れる」ことをテーマに、ストレス解消方法を研究。著書に『皮膚はいつもあなたを守ってる』(草思社)