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非モテ男5人がマッチングアプリに挑戦。春が来るかもしれない<連載>

暮らし

with担当・N谷:テンプレっぽいプロフの女性と会うことに

◆ N谷(30代)

 マッチングした相手とメッセージを重ね、ようやくランチへ行けることになった。相手のプロフィールに書かれている名前は、「YM」とアルファベット2文字だけ。

 あまりにも無機質で覚えるのが困難だが、ネット上にはひらがなでも本名を載せたくないという気持ちは分かるし、かと言って自分とまったく無関係の名前(例えば私の場合であれば、“ゆうすけ”、“なおき”など)を使うのも、源氏名のようで抵抗があろう。一番無難なのは「ゆうすけ→ゆう」、「なおき→なお、なおと」のように、本名の一部を省略したり文字ったりするパターンだろうか。

 30代中盤のYMさんのプロフィール写真には、切れ長の瞳と八重歯が特徴的な、明るい雰囲気の女性の姿があった。セミブラウンに染めたロングヘアも女性らしくて好印象。

 法律事務所で事務の仕事をしていると書いていたが、ほかには「元気で明るい性格で、人見知りはしないタイプです。新しい価値観や出来事に触れることも好きなので、なんでも楽しめるところは長所だと思っています」とあった。ううむ、完全にテンプレ。とはいえ、人見知りしないというのは有り難い。土曜の昼にランチする約束をして、その日を待った。

 個人的には、ライスがドンと出てくるような洋食屋や定食屋、町中華が好みなのだが、もう少し小綺麗な店のほうが良い気もした。デートっぽい雰囲気になるよう、神楽坂のビストロを電話で予約し、店へ向かった。

「着きましたよ〜」

 メッセージを受け取り周囲を見渡したが、それらしき姿が見えない。

「あれ、もう店のなかですか?」

 そう返事を送って改めてキョロキョロしていると、視界のなかに照れた様子でこちらに会釈する女性の姿が入った。店の前というより、入り口から5メートルぐらい離れたところに立っていたようだ。

「写真と違う」相手に対して自問自答

西谷さん

緑の多い場所に遊びに行きたいと話すN谷氏

 ひょっとしたら、事前にこちらの様子を窺っていたのかな。女性の立場から見れば、ネットで知り合ったどこの馬の骨とも分からん男と会うのは、警戒心を抱いて当然だろう。物陰から覗かれていたような気まずさを一瞬感じたものの、それぐらいは仕方あるまい。すぐに気を取り直して、「あ、どうもー」と会釈を返した。

 しかし、どういうことだろう。画像にあった切れ長の瞳やブラウンヘアはそのままだが、縦横比が明らかに異なる。女性の体型についてあれこれ物を申すことは不適切な時代だし、場面や状況によってはセクハラになる。

 そもそも、人間の本質は内面に宿るのであって、外見は内面ほど重要ではないはずだし、外見ばかりに重きを置くルッキズムというのは、愚かなことでもある。ただ、以上のことを踏まえても、やはり交際相手や結婚相手の外見を気にしてしまうのは、男女問わず普通なことではないだろうか

 4:3で録画したビデオを16:9のハイビジョンテレビで再生したときのような困惑を覚えつつ、ひとまず席へ着いた。相対してさり気なく相手の姿を確認すると、画像とのギャップは決して小さくなかった。

 多少昔の写真を使ったり、アプリで少し盛ったりするのは、許容範囲だろう。だが、何年前の写真まで許されるか、画像加工がどこまで許容できるかは、各人の良識に委ねられている

 会ったときに「あまりにも違う」と思わせない程度の、ちょっと背伸び程度が良いのかもしれない。特に、男性の画像加工には忌避感を抱く女性が多いようなので、無加工または最小限の加工に留めたほうが良いようだ。

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