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バイデン政権の船出は前途多難。トランプ信者とコロナを制御できるか

ビジネス

内政面で多くの課題を抱えている

 2020年10月にミシガン州知事の拉致を計画していた容疑でミリシアのメンバーら13人が逮捕され、翌11月にはペンシルベニア州の最大都市フィラデルフィアで大統領選挙の開票所を襲撃しようとした容疑で男2人が逮捕された。車の中からはトランプ大統領の旗やQアノン(極右勢力が提唱している陰謀論のこと)の文字が描かれた帽子が見つかった。

 また12月に、首都ワシントンの国会議事堂付近でトランプ大統領の再選を訴える数千人規模の抗議デモが行われた。そのなかでプラウド・ボーイズと極左組織「アンティファ」と衝突し、少なくとも4人が刺され、重傷を負う事件も発生している

 このような現実は、国際協調や多様性を重視するバイデン政権の政策運営にとって大きな壁になる。新型コロナウイルスワクチンの接種が始まったとはいえ、感染拡大が収束するにはまだ時間がかかる。

 今後数年間、バイデン政権は内政面で多くの課題に直面するといえよう。

バイデン氏は価値観を貫けるか

アメリカ

 その結果、バイデン政権は外交に十分な時間が取れなくなる可能性もある。多国間主義や国際協調路線を全面に押し出したとしても、内政面での混乱に対処する時間が多くなれば、バイデン氏の理想主義は力を持たなくなる。

 すでに国際政治のパワーバランスは大きく変化し、現在は超大国アメリカの時代ではなく、米中覇権時代、多極化時代である。そして、米中対立に象徴されるように、国際社会では自国優先主義的な流れやナショナリズムが強くなっており、サウジアラビアやイスラエル、ブラジルやエジプト、北朝鮮、そしてハンガリーやポーランドなどの右派政権はトランプ氏の敗北を内心では残念がっているはずだ

 こういった国際政治の流れの中では、バイデン政権の多国間主義や国際協調路線がどこまで機能するか不明瞭だ。バイデン氏自身も対中国については、現実主義路線で対応せざるを得ず、それは自身が掲げる価値観を巡る対立であるため、ジレンマでもあろう。

 バイデン政権の政策運営には、内政面と外交面のどちらとも現実的な課題が待ち構えている。

<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>

国際政治学者。首都圏の私立大学で教鞭をとる。小さい頃に米国やフランスに留学し、世界の社会情勢に関心を持つ。特に金融市場や株価の動きに注目し、さまざまな仕事を行う。100歳まで生きることが目標

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