シックスパッドのMTGがコロナ禍で「ホームフィットネスに注力」の背景
関心が高まるフィットネスやヘルスケアといった健康志向。新型コロナウイルスの流行によってテレワークや在宅勤務が推奨されるようになり、自宅で健康増進のためにトレーニングを行う人も増えている。
そんななか、独自のEMS理論(Electrical Muscle Stimulation ※筋電気刺激)を軸としたトレーニングギアとして知られているのが「SIXPAD(シックスパッド)」だ。
今回は同ブランドを手がける株式会社MTG SIXPADの熊崎嘉月氏(ブランドマネージャー)に、SIXPADが誕生した背景や今後の事業展開について話を聞いた。
「本物」を作りたかった
SIXPADは「日本発、世界No.1EMSブランドを目指して、世界中の人々が健やかに生活できる社会に貢献していくこと」をミッションに掲げている。日本では2000年代に空前のEMS機器ブームが到来。EMSを搭載した腹筋ベルトは当時のダイエット需要に応える形で大ヒットし、健康器具メーカーからはさまざまな“類似品”が販売されるようになった。
しかし、このことが「EMS機器に対する市場の不信感や誤解を生んでしまった」と熊崎氏は説明する。
「EMS機器ブームの最中、TVショッピングの通販を中心に『何もせずにラクしてやせる』『今日から巻くだけでダイエット効果が得られる』といった謳い文句が横行しており、誤った解釈を消費者に与えていました。
なかには粗悪品を手にしてしまい、国民生活センターに健康被害を訴える事例もあり、『EMS=胡散臭い』といった悪いイメージがついてしまった。このような悪評を払拭するために、“偽物”ではなく、“本物”のEMSを用いた『商品開発をしようもしくは商品を作ろう』と決意したんです」
「君たちがEMSをダメにしたんだ」
かくして本物のEMS機器の開発に乗り出したわけだが、まず着手したのはEMSに関するさまざまな研究や論文に目を通すことだった。先進的に研究がされているヨーロッパの論文を中心に読み進めていると、京都大学名誉教授の森谷敏夫氏が実証したエビデンスが出てくることに気づいたという。
「EMSについて世界的な権威を持つ研究者が日本にいることに驚きました。EMSがもたらす筋肉のトレーニング効果について、40年以上に渡って研究を行う森谷氏と共同開発すれば間違いない本物の商品が作れる。そう確信しましたね」
だが、そんな想いを背に森谷氏のもとへ訪ねたところ、ダメ出しされてきっぱりと断られたという。
「『君たちのような美容機器メーカーがEMSをダメにしたんだ』と言われてしまい、最初は全く聞く耳を持ってくれませんでした。ただこちらも本気だったため、世界的権威である森谷氏と共同開発することは譲れなかった。何度も足繁く通って想いを伝えていき、ようやくOKが出たんです」