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日朝首脳会談、最低限知っておきたい5つのポイント

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3)北朝鮮非核化の費用は支払うべき?

倉山:一部報道で「北朝鮮の非核化に日本が5兆円拠出する」と出て、官邸が必死に否定していますが当然です。

 北朝鮮の非核化費用に関しては徹底的に値切る、あるいは拉致被害者を一人も返さなければ1円も支払う必要はないでしょう。

 そもそも北朝鮮は国際的に孤立しているわけでもなく、世界160か国以上と国交を結び、貿易をしています。

 彼らにとって非核化のメリットは何もなく、油断してカダフィ大佐のように殺されたくもないでしょう(笑)。

 また、日本以外の中国や韓国と共同で負担する案もありますが、アメリカとしては中国を越えて北朝鮮と、一対一の対話のルートを築きたいので、あまり中国を介入さたくないのが本音でしょう。

 となると、日本も歩調を合わせざるを得ません。

4)アメリカや中国などの思惑は?

地球儀

※画像はイメージです

倉山:日本よ、どれだけカネを出してくれるんだ、という点に尽きますね。今回の米朝首脳会談は「歴史的に何も成果がなかった会談」と言われていますが、首脳会談がどのような意味を持つか今すぐ判断するのは難しいです。

 当時はヨーロッパでの戦争を避け平和的解決をもたらしたミュンヘン会談もその後、評価一変し、ヒットラーを増長させ、第二次世界大戦を引き起こした原因と言われています。

 ただ、アメリカにすれば「まずはお友達から始めましょう」と言って、北朝鮮のトップと会談できた時点で大成功でしょう。

 トランプ大統領としても、大事な秋の中間選挙に向けて、今は内政優先の時期です。これを受けて、国内の支持率も回復してきましたし、具体的な成果はこれから進めていくつもりではないでしょうか。

 ちなみに、開催地がシンガポールだったのは、両国にとって中立国である点と、国土が狭く空港などの警備しやすいことが考えられます。

 こういった機会にアメリカなどの大国に貸しを作っておくのが、小国が生き延びる知恵です。

5)安倍首相は何を気をつけるべき?

倉山:「拉致被害者の全員奪還は難しいから、今はこれくらいでいいだろう」という姿勢が北朝鮮に伝わった瞬間、日本は終わりです。安倍首相は間違っても、拉致問題を支持率アップや総裁3選の道具にしてはいけません。

 金正恩は生き残るためには兄弟や親戚も容赦なく殺す独裁者です。トランプ大統領とはまったくの別人です。

 安倍首相は、調整能力に長けた官僚タイプの政治家なので、外交上のケンカは苦手でしょうが、今回は強い意志で臨むべきです。

<TEXT/倉山満 構成/井野祐真>

憲政史研究者。著書にシリーズ累計35万部を突破した『嘘だらけの日独近現代史』『嘘だらけの池田勇人』(扶桑社新書)などがある

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