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「1泊500円でも来客ゼロ」コロナに翻弄されたゲストハウス

ビジネス

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や、東京オリンピック1年の延期の影響により、全国の宿泊業者は厳しい事態に直面している。とりわけその影響が色濃く現れているのは、この時期にたくさんの旅行客で賑わうはずだった海水浴場周辺の宿泊業者だ。

由比ヶ浜

由比ヶ浜海岸。通常よりは少ないものの、人影はある

 鎌倉市内にあるゲストハウス「プラージュ由比が浜」のオーナーを務める野口真央さん(35歳)に現状を聞いた。

コロナ禍でキャンセルの嵐

「東京でオリンピックが開催される予定だった今年の夏は、従来の5倍の価格を付けていたにも関わらず、昨年末の時点で既に満室。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって様子は一変しました。売上は当初見込みの60%減くらい。厳しい状況が続いています」

 東京オリンピックの開催に伴う、インバウンド需要に湧くはずだったプラージュ由比が浜に新型コロナウイルスの影が迫ったのは3月のことだった。

「東京オリンピックの延期(3月24日)が決まってからの数週間は、世界各地からキャンセルの連絡が相次ぎ、徐々に真っ白になっていくスケジュールを見ては、怖さを感じる毎日を過ごしていました

1泊500円でも来客ゼロの日々

野口真央さん

野口真央さん

 だが、野口さんの不安も虚しく、その後も国内外でも猛威を奮い続けた新型コロナウイルス。4月には日本政府が『緊急事態宣言』を発令し、移動の自粛が強く求められた。

「4月の中旬頃は、誰も来ない日が1週間くらい続きました。この時は、予約サイトの宿泊料を500円に下げてみたりもしましたが、それでもまったく反応がなくて……。

 夏の予約キャンセルに対応しつつ、来るあてのないお客様を待ちながら、フロントのテレビで映画を見て一日が終わっていく。この時は本当に先行きの見えない日が続き、『ヤバい』と感じながら過ごしていましたよ

 だが、県をまたぐ移動や旅行が厳しく制限され、全国各地の宿泊業者がビジネスの転換を強いられるなか、長期滞在希望者が多数入ったこともあり、一部をシェアハウスとして稼働させることにした。

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