上司がタイムカードを改ざん。ブラック介護施設からの転職を支えた“意外な恩人”
介護業界のキツすぎる仕事
「当然、介護の仕事が大変だということは覚悟していましたが、問題はそこではありません。僕が最初の給与明細書をもらった時に、なぜか1時間分の時給が勝手に引かれていたのです。上司に尋ねたところ『食事、トイレなどで1時間は仕事していないのだから、8時間勤務で1時間分の時給が引かれるのは、当たり前」と、こともなげにスルーされてしまいました」
一般に休憩時間は賃金が発生しません。しかし、野口さん曰く「休憩時間ではなく、仕事の合間に食事やトイレに行っているので、職場は離れていません」。なので、明らかに問題ありの減給です。
近くの労働基準監督署に駆け込めばよい気もしますが、「労基署を動かす労力は大変。調査立ち合いをして、雇用主との関係が悪化してこの職場に居られないのは困ります。労基署が出す是正勧告は、行政指導(強制力がない)ですからね」と言います。
野口さんの苦労はそれだけではありません。利用者の送迎がスタッフの自家用車なのです。しかも汚されたり、壊されたりしても会社からのサポートはありません。
“年の差”先輩との出会いが転機に
「ひどいというか、人でなしですよ。マイカーのスタッフが泣いています」と語る野口さんですが、半田哲男さん(仮名・63歳)という先輩と出会い、転機が訪れます。
「半田さんは朝夕の送迎を、愛車のセルシオで担当しています。仕事は過酷ですが、送迎手当は一律1000円しかないそうです。マイカーを使わせられるだけでもひどい話なのに、半田さんは『安い給料なのにガソリン代を立て替えるのはキツい、貯金もできない』とよく愚痴っています」
そんな半田さんに、野口さんが「なぜこんな企業で働いているか」と尋ねたところ、意外な答えが返ってきます。
「半田さんはバブル期に、ゲームセンターのゲーム機の卸売業、中古ゲーム機売買で財をなしたそうですが、2010年頃からのソシャゲブームの波に乗れず、経営が傾いてしまった。いまでも会社の借金の返済をしながら、介護職員として生活費を稼いでいるそうです」