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信頼と期待がブランドの力を生む。ハーゲンダッツ クリスピーサンドが歩んできた25年間の哲学【企業インタビュー】

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2001年、当時のアイスクリーム市場に彗星の如く登場した「ハーゲンダッツ クリスピーサンド」。流行り廃りが激しく新商品が次々と現れる業界において、発売から25年を迎えた現在も厚く支持され続けている。どのようにして世代を超えるブランドを築いてきたのか、クリスピーサンドの開発・マーケティングに携わる担当者を尋ねてみると、その背景には確固たるブランド力につながる、当初から一貫している哲学があった。

着想はタコスから、アイスクリームの新しいシーンを生み出したクリスピーサンド

「クリスピーサンドの原始的な着想はタコスなんです」

そう話すのは、ハーゲンダッツ ジャパン株式会社のマーケティング本部の吉岡さん。クリスピーサンドの開発が始まったのは、発売から7年前の1994年のこと。当時のアイスクリーム市場は、路面店などのショップにて販売されていたカップアイスが主流だった。そうした背景の中でハーゲンダッツにて発足した「WOW!プロジェクト」にてクリスピーサンドの原始のアイデアが生まれた。

7年間の試行錯誤を経て発売されたクリスピーサンドは、いままでにないパリパリとした食感と濃厚なアイスクリームの組み合わせが話題となり、爆発的な大ヒットを記録。また、片手で食べられるという形状から、アイスクリーム市場に新たなシーンをもたらすことになる。

「それまでの主流だったカップアイスクリームは、どちらかというと“癒やし”といった静的で、落ち着いて食べるものという位置づけでした。一方でクリスピーサンドは、より多くのシチュエーションで楽しめる“動的”な存在を担っていると思います」と吉岡さんは話す。

家の中でスプーンを使って食べるアイスクリームから、外出先でも片手で楽しめるアイスクリームへ。クリスピーサンドは、アイスクリームの楽しみ方そのものを拡張する存在として受け入れられていった。

瞬間的なトレンドは追わない独自の商品開発

ハーゲンダッツでは、新商品において平均して約2年間の開発期間をかけているという。一般的な開発期間と比較すると“かなり長い”開発期間の理由を尋ねてみた。

問いに対して吉岡さんは「ハーゲンダッツでは商品開発の理念としてお客様の想像を超えるものを作り出すという理念があります。そのためには瞬間的なトレンドを追うのではなく、素材の探求から生産まで一貫してこだわる必要があります」と返す。

トレンドを追うのではなく、あくまで自分たちが信じる価値基準から商品を生み出す。その姿勢は、ブランドの理念にも明確に表れている。吉岡さんは続けて、ハーゲンダッツの“キッチンフレンドリー”という理念について言及する。

「ご家庭のキッチンにおいてあるような、誰もが知っている素材を使うという意味で、原材料表示をご覧いただくと味の想像ができることが弊社の商品の特長です」

家庭のキッチンにあるような身近な素材で勝負する。その分、素材の選定や配合、食感の設計には時間がかかるが、季節限定商品であっても、その基準を決して緩めることはない。

こうした姿勢について、同社のクリスピーサンドの開発を担う川野邊さんは「この理念はブランドやお客様の安心を守る大切なものです。が、その一方で、開発時の制約になることもあります……(笑)。ただ、その中でどのように商品を実現していくかを考える。それはハーゲンダッツだからこそできることでもあり、それが楽しいところでもありますね」

原材料にこだわり、開発に時間をかけるとなれば、当然コストが上がり価格は高くなる。一見、売上や評判に影響があるように思えるが、ハーゲンダッツの商品に対して、「価格に関しては、弊社のこだわりがお客様にも納得いただけていることが調査で見える」という。

「定番であろうと季節限定であろうと、絶対にお客様の信頼を裏切ってはいけない。常にお客様目線に立って、クリスピーサンドをはじめ弊社の商品に対してどのような期待がされているのかを気にかけています」と吉岡さん。

目先の瞬間的なニーズを追わず、ブランド理念を守り、消費者の信頼と期待に真摯に応える。それこそがハーゲンダッツのブランド力の根幹であり、クリスピーサンドが25年間愛されてきた理由の一つだ。

新たな基幹商品とブランドの未来

香り高くほろ苦い抹茶アイスクリームを、やさしい甘さのホワイトチョココーティングで包み、香ばしくサクサクとした抹茶ウエハースで挟んだ新製品「ザ・グリーンティー」

2026年4月、クリスピーサンドの基幹商品である「ザ・リッチキャラメル」に加え、「ザ・グリーンティー」が新たな基幹商品として登場する。キャラメル以外のフレーバーが基幹商品に採用されるのは、25年の歴史で初めてのことだ。なぜ今、“定番”を拡充する決断をしたのだろうか。

「季節限定品に加え、通年販売する基幹商品を増やすことで、お客様に“今日はどれを食べよう?”と選ぶ楽しみを感じていただきたいと考え、今回のプロジェクトをスタートさせました」

「また、これまで数々の季節限定フレーバーを展開してきましたが、中でも抹茶系は人気が高いです。2025年に発売した、「抹茶ベリー」は、弊社としては挑戦的な商品でしたが想像以上の反響があって驚きました。新商品「ザ・グリーンティー」はそれまで評価していただいた“三位一体”のおいしさを踏まえつつ、ウエハースの抹茶の味わいなど細部までこだわり、全体のバランスを追求することで、食べた時の驚きを用意しています」と先方は話す。

25年続いてきたシリーズで初めて定番ラインアップを拡張する今回の決断。クリスピーサンドにとって、「ザ・グリーンティー」は“話題性”だけでなく、“継続して選ばれる味”としての手応えを得たフレーバーであることがうかがえる。

最後に、クリスピーサンドのこれからについて両者に尋ねてみた。

「お客様がより元気に、そして日常の中の幸せを少しでも濃く感じられる存在になれたらと思っています。実際に食べて心が動いたら、ぜひ感想をシェアしていただきたいですね(笑)。その声を原動力に、これからも驚きのある商品づくりに挑戦していきます」と、吉岡さん。

続けて川野邊さんは「サクッとしたウエハースに、パリッとしたコーティング、そしてとろ~りと濃厚でなめらかなアイスクリーム。そのハーモニーこそがクリスピーサンドの最大の特長で、ほかでは味わえない価値だと思っています。お客様の日常の中で、少し気持ちが上向くような存在になれたらうれしいですね」と想いを語った。

ザ・リッチキャラメル 25周年パッケージ

取材の中で印象的だったのが、クリスピーサンドが大切にしているという“三位一体”の考え方だ。ウエハース、コーティング、アイスクリーム、それぞれの調和を意味するものだが、ブランド側から積極的に発信している言葉ではないにもかかわらず、消費者を対象としたアンケートでは同様の表現が多く寄せられているという。

それはきっと、商品づくりを通じて、ブランドと消費者の間で共通の価値観が育まれてきた証であり、クリスピーサンドの約束事なのだろう。

目先のトレンドに流されず、素材へのこだわりと開発姿勢を貫き、消費者の信頼と期待に真正面から向き合う。その積み重ねが、25年という時間をかけてブランドの力を育ててきた。

期待と信頼を守り続ける――。
この哲学がある限り、ハーゲンダッツのクリスピーサンドは、これからも私たちの日常に、ささやかな驚きと幸せを届けてくれるに違いない。

文・写真:土田洋祐

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