緩やかな倒産増加が続く2025年【やさしいニュースワード解説】
在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「緩やかな倒産増加が続く2025年」です。
小規模事業者を中心に企業倒産が増加
企業倒産がじわじわと増えています。信用調査会社の帝国データバンク(TDB)の調べによりますと2024年の全国の企業倒産は9,901件(前年比16.5%増)となり、負債総額は2兆2,197億8,000万円(前年比6.6%減)でした。倒産件数は3年連続で前年を上回ったほか、2013年以来の1万件に迫り、2014年以降で最も多くなりました。
業種別にみるとサービス業が最も多く2,547件、次いで小売業が2,087件、建設業が1,890件でした。負債額5,000万円未満の倒産数は5,919件と、2000年以降で最多になったことも特徴です。物価高を原因とする倒産も933件と過去最多を更新し、倒産全体の約1割を占めました。このうち建設業が最も多く250件と、資材高などが影響したことが見てとれます。
これら倒産の背景には、物価高や人手不足、後継者難のほか、新型コロナウイルス対策の支援策の終了や、コロナ期に借りた資金(いわゆるゼロゼロ融資)の返済負担などがあり、小規模事業者を中心に緩やかな増加が続いたとTDBは見ています。
人手不足による倒産が深刻化
特に人手不足による倒産は深刻化しており、TDBの調べでは2024年に従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする倒産は累計で342件発生し、過去最多を2年連続で更新しました。さらに人手不足を感じている企業の割合は2024年12月時点で52.6%となり、2020年以降に急上昇して以来、高止まりが続いています。
労働者の高齢化も進んでおり、人手不足の影響を受ける建設業では、就業者に占める60歳以上の割合は23.9%と高くなっています。TDBでは今後も人手不足の倒産は高水準で推移すると見ています。
2025年も利上げや賃上げで厳しい見通し
身近なところでは、居酒屋の倒産が増えています。背景には消費者のニーズの変化や、酒類や食材の仕入れ価格の高騰、光熱費や人件費の上昇などがあります。このほか葬儀社の倒産・廃業も増加しています。コロナ禍をきっかけに親族だけで行う少人数の家族葬など簡素なスタイルの葬儀が増え、葬儀会社の収益が伸び悩んでいるためです。2024年は調剤薬局やドラッグストアの倒産や、芸能事務所の倒産なども目立った年でした。
TDBは、企業倒産は2025年も引き続き緩やかに増加していくと見ています。コストアップ要因の増加など、企業を取り巻く外部環境が好転する兆しはなく、日本銀行の追加利上げや、さらなる賃上げの動きが負担となる中小零細企業が増えてくると予想されるからです。今年は企業にとってシビアに生き残りが問われる一年になりそうです。