負債1億円で東大発ベンチャーが倒産。自殺者まで出た“株券印刷業”の末路/2022年下半期BEST10
2022年下半期(7月~11月)、「bizSPA!フレッシュ」で反響の大きかった記事ベスト10を発表します。ポータルサイトやSNSでも大反響だった記事はこちら!(2022年9月12日・情報は掲載当時のものです)。
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東大発のバイオベンチャー企業テラが、2022年8月5日東京地方裁判所から破産手続き開始決定を受けました。負債総額は1億8765万円。上場企業の倒産はゲーム販売店「トップボーイ」の経営などを行っていたNuts以来で、およそ2年ぶり。
テラは2022年12月期の売上高が2700万円ほどで、6億3900万円の純損失を計上していました。不祥事が続いたテラは金融機関などからの資金の道が閉ざされ、破産を余儀なくされました。テラは本業での稼ぎがないに等しく、上場後は増資を繰り返して資金を得る“株券印刷業”と揶揄されていました。それが数奇な運命を呼び寄せることになります。
赤字企業でも上場しやすい証券市場が創設
テラは2004年6月設立。がん免疫療法のひとつである「樹状細胞ワクチン療法」を中心に、化学療法や放射線療法を組み合わせて、効率的にがん細胞を攻撃する「アイマックスがん治療」を契約医療機関に提供していました。
創業者は東京大学医療学研究所で研究員をしていた矢崎雄一郎氏。長年研究者としてがん治療に向き合ってきましたが、資本力や組織力で医療問題を解決するバイオベンチャーに目が向きます。
1990年代に欧米を中心にバイオベンチャーが大型の資金調達をして、新薬研究へと突き進んでいました。2000年に入って日本でも本格化。2007年8月に旧ジャスダック内に新たな証券市場NEOが創設されました。
この市場は、利益よりも新技術やビジネスモデルを重視した市場であり、赤字企業でも上場しやすいという特徴がありました。NEOはカルナバイオサイエンスやセルシード、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所などのバイオベンチャーを上場へと導きました。
ベンチャーキャピタルの出口戦略にうってつけ
テラ上場時の第2位の株主で34.76%の株式を保有していたのは、ユーテック一号投資事業有限責任組合。これは東京大学のベンチャーキャピタルからの出資分です。
景気が低迷していた日本は新技術を生み出して成長力を取り戻す必要があり、そのためにはベンチャー企業の力が必要でした。特に、バイオベンチャーのように収益性が得られにくい会社は資金調達が不可欠。ベンチャーキャピタルからの出資に頼っていました。
その一方で、ベンチャーキャピタルは出資した資金のリターンを得て投資家に還元し、新たなファンドを立ち上げ、別のベンチャー企業に投資をするサイクルを回す必要があります。NEOはベンチャーキャピタルの出口戦略にうってつけでした。2009年3月にテラは上場します。