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原因は「盛り土」以外にも…熱海・土石流の対応が遅れた“本当の理由”

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 2021年7月3日に発生した熱海市の土石流災害。現時点(執筆時7月9日)でも行方不明者の捜索は続けられている。その一方で、避難所ではなく損壊した自宅に住み続ける「在宅避難者」がかなりいるはずだが、いまだ「取り残され」、過酷な環境下に置かれている。彼らへの支援も急務である。

熱海市

画像は熱海市公式サイトより

 本記事では現段階で見えてきた課題を現状とともに論じたい。筆者(古本尚樹)は浜松医科大学で従事中に、静岡県東部の観光地一帯の防災やリスクについて調査を行い、英文論文化した経験がある。

取り残される要配慮者たち

 熱海市は現状、在宅避難者の動向・把握がほとんどできていない。在宅避難者の少なからずは高齢者、独居者、障がいのある方が多く、自力で避難所へ行けない階層でもある。インフラでは電気はおおむね利用できるが、ガス供給停止と水道断水が続いており、彼らの生活環境は劣悪である

 また、医療や保健、福祉の支援を真っ先に必要としているにもかかわらず、いまだ支援の枠から漏れている。このままでは災害関連死や、健康悪化などへの影響が危惧される。一刻も早く、在宅避難者の確認と支援を行うべきだろう。

観光地特有の事情があった

熱海

熱海の街並み ©︎kazu8

 熱海は、面積が小さく、かつ傾斜のきついエリアに、住居や商業施設が立ち並ぶ。また海岸に沿って宿泊施設等が展開されていることもあって、ひとたび地震を含めた自然災害が発生すれば、土砂災害が危惧される地域だった。

 観光地特有なのは、固定化された住民と、非固定化された住民(すなわち、建物を保有していても、観光等で宿泊利用する階層)が混在することだ。初期段階から安否確認に手間取ることは、予想されていた。

 住民基本台帳は、現状の利用環境は反映されていないので、事前に定期的な住居の利用動態を把握する必要があった。そして、万が一の災害時における自力で避難できない住民への避難支援などを、事前に訓練とともに実践対策をより多くしておくべきだった。地理的に急峻(きゅうしゅん)なエリアでの要配慮者対策をどうしておくか、重点的に行うべきだった。

 それでなくても自治体のマンパワー不足と、熱海市自体災害対応が不慣れなのは歴然としている。いわば「後追い」状態なのは、各対応を見ればよく分かる。在宅避難者の件に加え、初期の避難所における物資不足や、設備不足など、ひと昔前の災害対応に近い部分がある。

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