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携帯ショップ店長が「クレーム対応」で毎日ラーメンを食べることになった理由

ビジネス

携帯ショップに「ワケあり客が多い」時間帯

 さらに「田中店長の携帯ショップは21時閉店ですが、20時半を過ぎると、お客さんがぐっと少なくなって、あと30分で閉店という時間帯に、ワケあり客がやってくることが多い」(矢加部さん)とか。その代表と言えば、家族割引を愛人用に使用したいという客。

「もちろん、そういったお客はお断りしているし、そもそも苗字が違うので、家族割引の対象にならないみたいです。しかし、ごく稀に苗字が同一の愛人がいるとか。その場合は、住所が違うから対象外になると、説得しているみたいです。いやはや携帯屋の店長も大変です」(矢加部さん)

 結局、家族割引にならないことがわかったお客さんには本人と愛人の2台を購入してもらい、請求書を愛人の自宅郵送ではなく会社宛てにしているとか。また口座引き落としではなく、本人支払いの請求書にしてもらうそうです。「愛人も家族割引にしたい客は、中小企業の社長が多いみたいです」(矢加部さん)とのことです。

 また、最近のモンスタークライアントは、チェーン店の多い飲食店だそうです。

「300店舗の連絡先を年度初めまで打ち込め」

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※画像はイメージです

 ある年の年度末近く、田中さんのお店にこんなモンスタークレーマーがやってきたそうです。

「突然、300店舗の社員全員に配る機種を注文してくれたのですが、なんと、『300店舗の連絡先を年度初めまで打ち込め』と言われてしまったのです」

 しかも、それは300店舗の名称と住所、電話番号などの情報をコピペすることができず、手動で一つひとつ打ち込むという依頼でもありました。

「1台の機種に300店舗の情報を手打ち。残りは赤外線を使用して一気に作成するという手はずでした。4月1日に社員全員に配るためには、3月31日に徹夜して、4月1日の早朝に本社に届けるという段取りを整えたそうです。ところが--」

 全店舗の情報が届いたのは、3月31日の午後11時すぎ。徹夜をしても、間に合いそうもないとがっくりした田中さんは店舗のスタッフを5人呼び出します。

「60店舗ずつ手打ちで打って、それをひとつにまとめようということになり、とにかくスタッフ一同、死ぬ気になって、打ちまくったそうです。朝の光がショップの窓に差し込み、駅前商店街をうろつくカラスの声が聞こえた頃、ついに300店舗分すべて入力が終わりました」

 田中さんらショップのメンバーたちは、やり抜いたのです。お客さんありきの営業マンですが、時には困ったクライアントになることもるようです。

特集・モンスタークレーマーとの死闘 Vol.6 ―

<取材・文/夏目かをる イラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust

コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。『週刊朝日』『日刊ゲンダイ』「DANRO」「現代ビジネス」などで執筆。
Twitter:@7moonr

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