親会社の名を騙り、「コネで入れてあげる」という男性の嘘がバレた理由
親会社社員相手に嘘をついていた男性
では、男性が嘘をついていると確信したきっかけは何だったのでしょうか。
「その広告代理店で使用している手帳や名刺のデザインです。彼が小ネタとして話した内容が、現状より若干古い情報だったんですよ」
実は美恵子さんが働いているのは、男性が勤務先として口にした広告代理店の子会社。
「だから最初、親会社である広告代理店の名前を出されたとき、素直にすごいなって思いました。でも、やっぱりそこと一緒に仕事することも多いので、彼の話がなんか変だなって気づいちゃうんですよね」
とはいえ、彼のプライドを傷つけてはいけないと思った美恵子さんは、そのあともひたすら彼の業務を褒めたといいます。
「大きなプロジェクトを任されているとか、部下が多くて大変だとか、自慢話も多かったですね。最後のほうは、『君も挑戦できる会社に転職したほうがいいよ』とも言われ、さすがにイラっとしました。話せば話すほど、彼が嘘をついていることは明白でしたね」
社員検索システムで彼の名前を検索したら…
次の日、本当に彼の勤め先が嘘だったのか確かめるため、美恵子さんはグループ会社共通の社員検索システムで彼の名前を入力しました。
「そしたら、なんと彼は私が働く会社の子会社、つまり彼が騙った広告代理店からすれば、孫会社の社員だったんです。てっきり、全然関係ない広告系の会社に勤務しているのかと思っていたので逆に驚きました。若干内部事情がわかる分、嘘がバレづらいと思ったのかもしれません」
会社名だけがすべてではないものの、美恵子さんは改めて彼の言葉を思い出し、怒りを抑えられなかったと言います。
「彼は最後、私に『俺の会社は倍率高いから無理だけど、子会社くらいならコネで入れてあげられると思うけど。頑張れる?』って言われたんですよ。おまえの会社はうちの子会社だよ!って感じ」
彼が実際に勤めている会社とは業務上のかかわりもあるという美恵子さん。いつか遭遇したときは一言チクリと言いたいと語っていました。
<TEXT/珠葉このか イラスト/中西トモナオ>