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「昭和のおっさん全開乙でもいい!」タイパを求める人間が退化するワケ<伊藤羊一×池田紀行>

ビジネス

読書よりも効率のいい学習方法はない?

池田:今の若い子たちは「賢く」とか「スマートに」とか、効率を求めているように見えます。動画も倍速で見る世代じゃないですか。たとえば僕が読書論をnoteやTwitterに書くと、「この人絶対昭和の人だと思ったら、やっぱり昭和だったww」みたいな声が返ってくる。この世に読書よりも効率のいい学習方法があるのならおじさんに教えてくれよって話です。

伊藤:そこは「おっさんだ、若者だ」という話ではないはずなんですよ。人間の成長にとって不可欠なものであるわけですから。読書にしても、読んでいてわからないと思うようなことが点になっていたりします。その点がいろんなところに散らばっていればいるほど、それらが繋がったときにはより大きなエネルギーになります。

池田:YouTubeで簡単に本の内容がまとめられたダイジェストですべてが理解できるとは思えない。よく300ページもある本を、「ポイントはこの3つだけ!」などとまとめてありますが、3つしかないわけがないんですよ。たしかに「読んだふう」にはなれると思いますが、自分の血肉にはひとつもなっていない。

 ただ単に、ひとつのエンタメを消費したにすぎないと思うんですよ。ただ、こういったダイジェスト動画にも素晴らしいところがある。それは「この本の全体感はこうで、ポイントはこの3つですよ」と「全体感をざっくりと把握させてくれること」です。だから僕はYouTube動画で全体感を掴み、その後「ちゃんと自分で読む」を推奨したいですね。

「タイパ」では絶対できないことがある

伊藤羊一

伊藤羊一『「僕たちのチーム」のつくりかた』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

伊藤:それを今は「タイパ」って言うみたいですね。生産性とか効率性は大事なことだとは思いますよ。でも「タイパ」というのは、簡単に情報を手に入れようという魂胆が透けて見えて、それでは薄く広くという形でしか得る物がないと思うんですよね。

池田:優秀な人というのは、他人ができないことができるか、もしくは他人と同じことを誰よりも早くできるか。そのどちらかしかないと思っています。つまり生産性や効率性がセットになっているんですが、その領域に達した人が「タイパ」と言うのなら理解できます。でも、その領域に足を踏み入れてもいない入門したての若い子が「タイパ悪いですね」って。だったら、その「タイパ」なるもので、先輩の半分の時間でこの仕事やってみて、と思いますよ。

伊藤:「タイパ」なるものを意識しないでいると、無駄と思われるような行動や思考から点が生まれていきます。それが溜まると気付きに繋がるんですよ。テキストだと表現しづらいかもしれませんが……、気付きって「うおー!」となることじゃないですか。「うおー!」となるには「ん? どういうこと?」という疑問の感情が必要で、それが積み重なるからこそ、「うおー!」に繋がるわけです。長嶋監督みたいで申し訳ないですが。

「僕たちのチーム」のつくりかた

「僕たちのチーム」のつくりかた

一人ひとりの強みを活かし、成果に向かってともに進む「フラットなチーム」のつくり方を、1on1、会議、プロジェクト、ゴール設定など具体的なカテゴリごとに紹介

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