「駅から徒歩2時間半」一軒家を“立ち飲み屋”に改装した34歳の自給自足ライフ
無農薬、無堆肥の自然農を取り入れたオーガニックファームにて年間120種類の野菜を栽培している永野太郎さん(34歳)。2022年12月には最寄り駅から徒歩2時間半という田舎のど真ん中で、「立ち飲み屋 元気です。ばんざい」という自家栽培の野菜を取り入れた日本初のオーガニック野菜を主体とした立呑屋を夫婦で始めた。
もともとは東京でイラストレーターとして活動をしていた彼だが、現在はさまざまな生き物を捕って食べる活動をしながら、なんでも屋としても働いている。なぜ田舎に住むという選択肢を選んだのか?「田舎暮らしの現実」について話を聞いた。
「クモの素揚げは美味しい」
――なぜ、都会での生活をやめて田舎暮らしを始めたのでしょうか?
永野太郎(以下、永野):もともとは、イラストレーターとして働いていたのですが、東日本大震災以降、仕事がなくなってしまって、介護職に就きました。そのタイミングで、野食会というワークショップを始めまして、捕った虫を食べるという会を開催していました。
牛を食べるのと虫を食べるのと、命は一緒なのに、なぜ虫だけが嫌がられるのか。そこの真理を追究したくて。野食BBQなども定期的に開催して、そこらへんで捕ってきたカエルや蛇をその場で焼いたり、ジョロウグモを素揚げして食べたりしていました。
「クモってこんなに美味しいのか」と感動しましたね。なのでいっそのこと自然豊かなところに引っ越して、日常的に野食で暮らしていったら面白いんじゃないかと思いまして、30歳の時に田舎に引っ越しました。
ゴミを捨てに往復2時間の生活
――ここで完全に人生の舵を切ったわけですね。
永野:最初は千葉県鴨川にある祖父の家が空き家だったので、そこに住むことにしました。ゴミ屋敷になってたので掃除が大変でした。車を持っていなかったので、リヤカーでゴミを山の麓まで持っていくのに、往復2時間くらいかかってました。
――2時間ですか。アフリカの水を汲みに行く仕事みたいに過酷ですね。
永野:1か月くらいかけて掃除したのですが、そのタイミングで父親から連絡があり、「あの家は趣味の家にするから出ていってくれ」と言われてだいぶ揉めました。結局、出て行くことになり、掃除だけさせられたみたいな……。その時貯金が20万円くらいしかなかったので、地元の人に安い空き家を紹介してもらって、家賃月3万円の掘立て小屋みたいなところで暮らし始めました。