<漫画>東京湾の深海にある「理想の水族館」を生んだ、ダイオウイカと“女性漫画家”の存在
品川駅から“しんかい線”に乗って20分。東京湾の深海にある水族館が舞台の漫画『マグメル深海水族館』(新潮社BUNCH COMICS)。水族館をとりまく人間模様や深海生物との交流が丁寧に描かれた本作は、子どもから大人まで幅広く支持を集めています。
本作が初連載ながら、取材時点(2022年9月)で単行本も8巻まで発売中という人気作を生んだ作者の椙下聖海さん(@key_dsam)に、作品の誕生秘話を聞きました。また、最後にはインタビューと共に、『マグメル深海水族館』のプロローグ第0話を紹介します。
マグメルは理想の水族館
――現実にはまだ深海の中にある水族館は存在しませんが、どうやって「マグメル深海水族館」を思いついたのですか?
椙下聖海(以下、椙下):深海生物の漫画を描こうというのは決めていました。じつは、最初は深海を研究している大学生の物語を考えていました。でも私自身ちゃんと深海生物のことを研究したことがあるわけではなかったので、行き詰まってしまって。
そんなときに担当編集さんが「椙下さんにとって、理想の水族館ってどういうものですか?」と聞いてくれたのがきっかけで、自分の理想の水族館を舞台にしようと思って『マグメル深海水族館』が誕生しました。
――りんかい線をもじった“しんかい線”や品川駅などリアルな設定が、実在する場所のように感じられてワクワクしました。
椙下:深海って簡単に行けるようなところではなくて、宇宙より遠いと言われています。でも、もし気軽に行ける場所になったら、人と深海生物の距離がより縮まるんじゃないかなと思ったんです。だから、東京という海外の人も来やすい場所から、電車で20分の距離という設定にしました。
もっと深海生物のことを知ってもらいたい
――たしかに深海生物って、海のなかでも身近な存在ではないかもしれません。
椙下:やっぱり水族館ではまだまだイルカやペンギン、ラッコのような、見た目も可愛いくて、人と触れあえるいきものが人気だなと感じます。深海生物たちは触れあうこともできないし、どうしても注目されづらいですが、もっと深海生物のことを知ってもらいたいと思っています。