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「焼肉きんぐ」の1人勝ち?焼肉業界ライバルと明暗の理由は出店戦略にアリ

ビジネス

徐々に回復傾向にある

 全社の業績を簡単に見ていきましょう。2020/3期はもともと宴会需要の低迷で居酒屋事業が不調となっていたところに2、3月のコロナショックが業績に悪影響を与えました。一方で牛角単体の業績は公表されていないものの、(3)事業が好調なことから焼肉・しゃぶしゃぶ事業の好調がうかがえます。なお、利益面ではコロナ関連費や閉店に伴う減損損失で赤字が拡大しています。

 翌2021/3期は緊急事態宣言に伴う休業や時短営業が影響したほか、不採算店の閉鎖で売上が大幅に落ち込みました。(3)事業も4割程度減収しており、牛角事業も打撃を受けたと考えられます。

 首都圏・都市部に店舗が集中しているため、郊外型チェーンよりもコロナ禍の影響が大きかったのではないでしょうか。2022/3期は、(3)事業の減収幅は落ち着き、全社売上高もやや回復しました。利益面では販管費を100億円抑えたことで黒字化に成功

「牛角」に関して公式に店舗数は公表されていませんが、2021年に約600店舗を展開していたものの最新2022年では600店舗を下回っているとの情報もあります。なお2023/3期1Qでは全社売上高が前年比で3割増えているため、回復には向かっているようです

都市部の店舗は苦戦が続くかも

焼肉

 焼肉業界の推移を見ていくと、ロードサイドで食べ放題スタイルを展開する「焼肉きんぐ」が好調な一方、安さが売りだった「安楽亭」はお得感がなくなったためか苦戦しているのではないでしょうか。

「牛角」など、都市部や駅前に展開するチェーンも不調な様子がうかがえ、宴会需要がコロナ以前の水準に戻っていないことが要因として考えられます。コロナは依然継続しており、都市部の店舗はしばらく苦戦が続くのではないでしょうか

 加えて最近では経済活動の回復や円安、ウクライナ侵攻に伴う原油・穀物価格高騰が牛肉価格の高騰をもたらしています。避けられない値上げやサイズ変更が、消費者離れ解消の足かせになることも考えられます。

<TEXT/経済ライター 山口伸 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー

Twitter:@shin_yamaguchi_

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