回転寿司なのに「本格スイーツ」、スシロー本気の“専属パティシエ”誕生の経緯
寿司を食べるきっかけになれば良い
さらに、スシローは回転寿司という業界そのものの裾野にまで目配せをしていた。
「カフェとして来てみたけど『こんなお寿司もあるんだ! 食べてみよう!』と、それまであまり回転寿司に来られなかった方が、お寿司を召し上がっていただくきっかけにもなると思っています」
利用者にとってカフェ利用の新たな選択肢が増え、しかもそれが本格的なスイーツであることは嬉しい。一方で店舗にとっても、アイドルタイムの稼働向上や回転寿司に来店するきっかけ作りになるという、まさにwin-winの関係性が成立していた。
こだわりぬいた開発の舞台裏
まだスシローのスイーツを食べたことがない人に、まず食べて欲しい看板商品について聞くと、専用の焼き方まで駆使して開発するという、「本格的」と謳うにふさわしいこだわりの商品の名前が挙がった。
「『カタラーナ』をまず召し上がっていただきたいですね。材料にはもちろんこだわりがありますが、特徴的なのは焼き方へのこだわりです。この焼き方によって、他にはない独特の食感が生まれています。お菓子のように、鉄板に乗せてオーブンで焼いてしまうと均等に火が入らないんですよ。だからと言って、プリンのように湯煎で焼くと、水分が出すぎて柔らかくなりすぎてしまいます。
そこで、オーブンの直焼きと湯煎焼きのいいとこ取りをした焼き方を開発しました。具体的な焼き方は、申し訳ありませんが企業秘密です。社内でもこれを知っている者はごく限定された人数しかいません。工場で焼いたカタラーナを、店舗では提供直前にグラニュー糖をかけて炙ることで、香ばしい香りやパリッとした食感もお楽しみいただけると思います」
ここまでこだわったカタラーナが198円(税込)(※一部店舗では価格が異なる)というのが驚きだ。サイドメニューの中で、社員や店舗スタッフの人気がダントツだという。
ホイップクリームの開発に1年かけた
他のオススメメニューを聞いたところ、ひとつの商品ではなく、「さまざまなスイーツに使われているクリームを味わってほしい」と平野さん。
「多くのスイーツに使っている『べつばらクリーム』シリーズを是非召し上がってほしいです。町の洋菓子屋さんは、職人さんが混ぜてホイップクリームを作ると思うんですが、それをチェーン店で展開するのはすごく難しいんです。しかし、出来合いのホイップクリームだと本格的なスイーツはできないので、1年かけて開発しました。原材料は一部に北海道産の牛乳を使っていて、繊細な温度管理が必要なので、工場はもちろん、輸送や店舗でも神経を使っています。
普通ホイップクリームは添えられていることが多いと思うんですが、スシローカフェ部では、『べつばらクリーム』が主役になるように、アップルパイやガトーショコラなどの商品を開発しました」