「好きなことを仕事にする」渡辺淳之介×藤井健太郎が語る、“正反対”の見つけ方
勝負する前に「下りない」ということ
――学校に行くのは面倒だったけど、大学には進学したんですね。
渡辺:ヤラしい話なんですけど、僕が大好きなミュージシャンとか映画監督とか、だいたいいい大学行ってるんですよね。それで、なんか、イライラしたんですよ。
藤井:どういうこと?
渡辺:いかにも勉強は嫌いだったって感じでギター弾いてるのに、「お前慶応かよ!」みたいな。なので、自分も一回そこに乗っておきたいなと。謎の焦りがありました。
藤井:僕は“まわりみち”をした、という感覚はそんなにないですかね。まあでも、ADの頃は、仕事を覚えてから次のステップに進むまでに、後任が来ないとか、年次的にまだといった“会社の事情”でとどまらなくてはいけないこともあったりして、それはすごいストレスでした。
――会社員ならではのストレスですね。そういう時、辞めたいと思うことはありませんでしたか?
藤井:その時は全然思っていませんね。途中も途中だったので。まだまだ勝負する前、準備段階じゃないですか。いざ自分がやってみて、世に問うっていう段階の前なので。目の前の作業から下りたいとは思ってないです。
いつ時代遅れになるか、という不安が
――ところで、渡辺さんは「生きづらさ」の記事をよく読むとのこと。今もですか?
渡辺:今もです。生きづらいって、自分が子供の頃、ずっと感じていたことだったりするんですよね。学校もきちんと行ってないし……。「希死念慮」じゃないですけど、いなくなったほうが楽だなとか思っているようなタイプでした。大学には行きましたが、“ああやっぱり俺は社会で生きていけないんだな”っていう確認になったし、今でも当時の生きづらさはよく思い出すんです。だから、読んで、自分もそうだったなって。
――今も生きづらいな、と思うことはありますか?
渡辺:毎回毎回、今が人生の頂点なのかなって思うんです。去年はBiSHがNHK紅白歌合戦に出させてもらう、なんていうこともありましたし。でもそうすると、その後失敗するほうがこわい。ここで人生終わったら結構いいなって思うことはありますね。
……僕はどっちかっていうと、子供の頃の夢を叶えている方の人間だと思うんです。実際そうだし、楽しいこともいっぱいある。好きなことをしてお金をいただけるのはありがてえなって思う。でも自分のなかに“生きづらさ”があるというのは、ずっと変わっていないかもしれません。
――どういう部分が“生きづらい”と感じますか。
渡辺:この年齢になって漠然と思うんですけど、“老衰”っていうか、期限問題というか。自分たちの勝負できるセンスがいつ時代遅れになるかっていう不安、危機感はありますね。
藤井:(うなずく)