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生きづらさを抱える発達障害グレーゾーン。過敏で傷つきやすい人たちも

学び

紛らわしい「恐れ・回避型愛着スタイル」

孤独

 不安型愛着スタイルとASDの状態は見分けがつきやすいので、両者の鑑別点を知っていれば、混乱が起きることは少ないだろうが、両者の中間に位置するような状態もあり、その場合は、専門家でも見分けがつきにくくなる。それは、恐れ・回避型愛着スタイルがベースにある場合だ

 恐れ・回避型愛着スタイルは、相手の反応や評価、自分が受け入れられているかどうかを非常に気にする不安型の面と、傷つくのが嫌で、親密で情緒的な関係をもつのを避け、距離をとろうとする面の両方が同居しているタイプで、相手に受け入れてもらいたいけれど、相手が怖い、信じられないというジレンマを抱えている。

『泣いた赤鬼』という童話がある。赤鬼は、村人と仲よくなりたいのだが、お互い疑心暗鬼になり、なかなか近づくことができない。そこで、青鬼が悪者役を買って出てくれて、赤鬼がよい存在だということが明白となったことで、お互いに心を開くことができたのである。

 あるいは、『美女と野獣』の野獣のように、自分はどうせ嫌われると思い、自分の城に閉じこもり、誰にもその姿を見せようとしない。迷い込んできた娘が好意を示しても、それを信じることができない。お互いの自己犠牲的な愛情を確認したとき、はじめてその不信感が消え去り、呪縛が解ける。

対人恐怖的な「恐れ・回避型愛着スタイル」

 恐れ・回避型愛着スタイルの人では、自分が嫌われ、拒絶されるのではという恐れのために、相手に対する態度が臆病で、ぎこちないものになってしまう。対人恐怖的な不安が、スムーズに相手とやりとりすることを妨げてしまう。

 また、恐れ・回避型の人では、親密な関係へと踏み出すことに恐れをもつだけでなく、チャレンジ全般や新しい取り組みに対しても消極的になりやすい。なぜなら、新しいことにチャレンジをしようとすると、そこには新たな人間関係や関わりがともなってくることになり、説明したり、交渉したり、自己開示したりしなければならなくなるからだ。

 能力としては、社会的コミュニケーションに障害があるわけではなくても、それを避け、行動機会が減ると、スキルの低下も起きる。周囲からは、できないからやらないのか、それともやりたくないからやらないのかは判別できない。結果的に、社会的コミュニケーション障害があるのと大差がないことになる。

発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法

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発達障害、パーソナリティ障害、愛着障害など、現代人のこころの闇に最前線で向き合い続ける精神科医が心をこめて書き下ろす渾身の一冊

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