精子ドナーで年間約70万円の稼ぎにも。米国で盛んな「精子ビジネス」の現実
精子バンクはいくつあるのか?
全米に精子バンクはどのくらいあるのか? 主な精子バンクを紹介しているサイトの「Co-ParentMarch(コ・ペアレントマッチ)」では、14施設をリストに挙げている。
上記のリストに掲載されていない大手精子バンクでは「Fairfax Cryobank(フェアファックス・クリオバンク)」や「Seattle Sperm Bank(シアトル・スパーム・バンク)」、デンマーク発で日本支社もある「Cryos International USA(クリオス・インターナショナルUSA)」などがある。
「スタンフォード大学(Stanford University)」の調査レポートによると、米国には約150か所の精子バンクがある。主な大学の周辺に精子バンクが密集しているという。「知的で生殖力のある若い男性が多いから」というのが理由だ。
米国では、精子提供に関する法的な制限はない。「American Society for Reproductive Medicine(米国生殖医学会)」の指針では「人口80万人当たり1人のドナーが子ども25人まで可能」としている。
学歴、目の色…人気の精子とは?
どんな精子が人気なのか? 前述した「スタンフォード大学」の調査レポートによると、人気の精子は「大学生の精子」とあり、全米で提供されている精子の50~90%は大学生のものだ。各精子バンクの精子ドナーのプロフィールを見てみると、学歴や病歴のほか、人種、髪の毛の色、目の色、身長、体重、子どもの頃の顔写真など、まるでオンラインデートのサイトに掲載されているような情報が並ぶ。
オンラインデートのサイトでは、プロフィールにある年齢や経歴などの詐称が多く、さまざまなトラブルや事件が発生している。女性が高額な費用(50万円以上)を払って購入した精子は、学歴や病歴など100%保証されるのだろうか?
前述した調査レポートによると、精子提供を申し込んだ人の5%が選ばれ、8週間から6か月のあいだ、さまざまな検査(精液や血液の検査、健康診断など)が実施され、提供してもよい精子だと判定された後に実際の提供が行なわれる。
同性愛者(ゲイ)の男性や薬物使用の男性の精子は使用されないというが「薬物使用した男性の精子提供によって生まれた子どもが、精子ドナーと同じように薬物使用のために死亡した例」や「精子バンクのサイトに掲載されていた精子ドナーのプロフィールに虚偽があり、自閉症の子ども2人が生まれた。同じドナーから生まれた他の12人の子どもも自閉症だという例」(註:現在のところ、自閉症の要因が遺伝子からなのかは分かっていない)が報道されたこともある。